[宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (十二)
(修行二)小坊主の殆どが商家の出であり、次男三男が多かった。わがままの許される家から戒律の厳しい寺へ移り、嘆き悲しむ日々を送っている。もしも実家に逃げ帰ろうものなら、己は勿論のこと、親兄弟、果ては親族たちのことまで非難の対象となってしまう。そんな彼らに対して、ごんすけが吠えた。「子をすてるおやなんていねえ!おやをすてる子はいるかもしれねえが……」自戒の念を込めてのごんすけの言葉に、沢庵和尚が手を打って小坊主たちに説き始めた。「よう言うた!その通りじゃ。みなそれぞれに親がある。されど、憎うてこの寺へ入れたのではないぞ。お前たちの先行きを案じての事じゃ。それぞれに事情は違うけれども、よくよく胸に手を当てて考えてみよ。今のお前たちならば、当時の親の心が分かろうというものじゃ」「こんな言葉を知っておるかのお。『寵...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(十二)
2023/06/30 08:00