水たまりの中の青空 ~第二部~(二百九十一)
前夜まで降り続いていた雨も上がり、ぬかるんでいた道もほぼ乾いた。そこかしこにある小さな水たまりに車輪が入ると、水しぶきが上がる。突き抜けるような青空が、一気にゆがんでしまった。「キャッ!」。「うわっ!」。そんな奇声が上がるたびに、「すみません」と小声で呟き、頭を下げる竹田だ。が、当の相手には聞こえるはずも、竹田が頭を軽く下げる様も見えるはずもない。「仕方ないじゃない、道が悪いんだから。そんなことで一々頭を下げることなんか、ないでしょ!」“心根の優しい竹田らしいわね”と心内では思いつつも、口から出る言葉は辛辣だった。「はい、申し訳ありません」と、小夜子にも頭を下げる竹田だ。「米つきバッタじゃあるまいし、男がそんなに頭を下げないで!もっと毅然としなさい!」と、またなじる小夜子だ。「申し訳ありません、性分なもの...水たまりの中の青空~第二部~(二百九十一)
2022/11/30 08:00