水たまりの中の青空 ~第二部~(二百五十一)
「変わっていないね、竹田嬢は」「そうだね、相変わらずの女王さま気取りだ。」車座からはなれた場所で、ふたりの恩師がささやきあう。「でも、そんな彼女を、皆さん認めてらっしゃるんでしょ?在学時から、特別待遇でしたものね」遅れて来た女教師が話の輪にくわわった。「そう、そうなんですよ。どうもね、あの娘にかぎっては許してしまうんですよ。不思議と腹もたたないんですね」「同感です。某教師は『卒業したら求婚してみるかな。へなちょこ坊主の佐伯正三なんぞに渡してなるものか!』なんて、真顔で言ってましたから」じっと小夜子のはじけるような笑顔を見ながら「それにしても、美人になりましたねえ」と、付け加えることを忘れなかった。そして「あのとき、『おれんとこに来るか?』って、こなをかけときゃ……。いや、冗談ですけどね」と、目を遠くへはせ...水たまりの中の青空~第二部~(二百五十一)
2022/06/28 08:00