水たまりの中の青空 ~第二部~(百四十二)
「女将、女将、女将。聞いてるか?この佐伯正三くんはな、驚くなかれ、恐れ多くもだ、逓信省の次官さまになられるお方なんだよ。我々とは、まるで違うお方なんだ」「そうですよ、そうです。年次としては、我々の後輩ではありますよ。年下です。突然にこの極秘プロジェクトに参入した、新人ですよ。でもね、佐伯局長さまの甥っ子さまであらせられる。控えおろう!ってな、もんですよ」ネクタイをねじり鉢巻にした二人が、口々に正三を持て囃した。「まあまあ、そうですか。佐伯局長さまの甥っ子さまですか。いつも、佐伯さまにはご贔屓にしていただいて、ありがとうございます」「でな、女将。今夜の……」。口ごもる正三に対して、「まあまあ、みなまで仰いますな。分かっておりますですよ、万事お任せあれえ、です。どうぞ、心行くまでお遊びくださいまし。もうそろそろ、芸...水たまりの中の青空~第二部~(百四十二)
2021/09/30 08:00