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  • 後に残る者たちへ/中華ドラマ『一念関山』

    〇『一念関山』全40集(檸檬影業、愛奇藝、2023年)架空の王朝を舞台にした武侠劇。中原では、安国・梧国という2つの強国が覇権を争っていた。戦いに敗れた梧国皇帝は安国の捕虜となり、安国は梧国に対して、十万両の身代金を携えて迎帝使として皇子を寄こすよう要求する。迎帝使の人選に苦慮した梧国宮廷は、皇帝の異母妹で、母親の身分が低かったため、冷宮で育った公主の楊盈を皇子礼王と偽って送り出すことにした。梧国の秘密警察組織である六道堂の堂主・寧遠舟は、礼王の護衛として旅に同行することになった。一行には、六道堂の仲間たちのほか、寧遠舟の表妹を名乗る謎の美女・任如意が加わっていた。如意はもとの名を任辛と言い、安国の秘密警察・朱衣衛の左使をつとめた伝説の刺客だった。しかし7年前、敬愛していた安国皇后が何者かに殺害される事件...後に残る者たちへ/中華ドラマ『一念関山』

  • 日本人と日本文化の起源/縄文人と弥生人(坂野徹)

    〇坂野徹『縄文人と弥生人:「日本人の起源」論争』(中公新書)中央公論新社2022.7本書のオビの表面には、縄文人と弥生人の復元模型の顔写真を並べて、大きな赤字で「日本人とは何者か?」と書かれていた。裏面には「縄文人と弥生人はいかなる人びとであったのか?」とも。私は、この種の疑問には関心がなかったので、本書をスルーしていた。しかし著者の関心は、より正確には「日本人(縄文人と弥生人)はいかなる人びとと考えられてきたのか?」という論争史にあると分かって、俄然、興味が湧いて読んでみた。日本における近代的な人類学・考古学はモースの大森貝塚発掘(1877年)に始まるというから、150年足らずの歴史しかないが、研究は大きな進展を遂げてきた。そもそも当初は、縄文式土器と弥生式土器の先後関係も明らかではなく、異なる集団の文...日本人と日本文化の起源/縄文人と弥生人(坂野徹)

  • 晴れの日の装い/繍と織(根津美術館)

    〇根津美術館企画展『繍(ぬい)と織(おり):華麗なる日本染織の世界』(2023年12月16日~2024年1月28日)初代・根津嘉一郎の蒐集品を中心に、法隆寺や正倉院伝来の上代裂、袈裟や打敷などの仏教染織、唐織や縫箔といった能装束、そして江戸時代の小袖まで、幅広い時代の染織品の中から、織と刺繡の技が光る作品を紹介する。私は染織工芸には、あまり積極的な関心を持っていないのだが、同館では、何度か興味深い展示に出会ったことがある。たとえば、2022年の企画展『文様のちから技法に託す』や、2021年の『国宝燕子花図屏風』展にあわせて、3階の展示室5で開催されていた「上代の錦繍綾羅(きんしゅうりょうら)」などである。本展は、はじめに上代裂を特集。経錦(たてにしき)と緯錦(ぬきにしき)とか、夾纈(きょうけつ)・臈纈(ろ...晴れの日の装い/繍と織(根津美術館)

  • 2023東京ジャーミーから笹塚へ歳末散歩

    今夜はクリスマスイブ。机の上には去年、ロフトで買った安物のツリー。アラブ・トルコのお菓子をデザートにいただく。昨日、代々木上原のモスク(東京ジャーミー)の「パレスチナ・デー」と題したイベントに行って買ってきたもの。訪ねたのが午後の遅い時間だったので、すでに品薄だった。機会があったら、次はもっと早い時間に行こう。スイカのブローチ(木製)も買った。スイカがパレスチナへの連帯のシンボルとして使われていることは知らなかったけど、その色彩(赤、緑、黒、白)を見たら、すぐに分かった。この日は、代々木上原から笹塚までぶらぶら歩いてみた。私はこの近辺に10年くらい住んでいたことがあるのだが、職場と自宅を往復するだけの日々で、通勤経路を外れた街歩きを楽しむこともなかったなあ、と振り返る。笹塚では、以前にも一度来たことのある...2023東京ジャーミーから笹塚へ歳末散歩

  • 2023年8-12月展覧会拾遺(東博の展示から)

    東京国立博物館の展示から。■東洋館8室特集『中国書画精華-日本におけるコレクションの歴史』(前期:2023年10月31日~11月26日)(2023年11月28日~12月24日)毎年恒例の特集展示。今年は前期・後期とも、伝来の時期による「古渡り」「中渡り」「新渡り」の分類に従って展示されていた。前後期とも見に行ったが、特に後期は、根津美術館の『北宋書画精華』とつなげて見ることで味わいが増したように思う。後期は、金大受筆『十六羅漢図』3幅など、仏教道教に関するあやしい人物画がたくさん出ていた。『天帝図軸』(元~明時代)は、玉座に玄天上帝(足元に亀と蛇の玄武)、その周りに四人の武神、関元帥(関羽)、趙元帥、馬元帥、温元帥を描く。所蔵先は文京区の霊雲寺で、徳川将軍家の祈願寺だという。地理的に、私は近くを通ったこと...2023年8-12月展覧会拾遺(東博の展示から)

  • 2023年8-12月展覧会拾遺

    書き洩らし展覧会レポートの振り返り。■泉屋博古館東京特別企画展『日本画の棲み家-「床の間芸術」を考える』(2023年11月2日~12月17日)明治時代以降、西洋に倣った展覧会制度の導入は、床の間や座敷を「棲み家」とした日本絵画を展覧会場へと住み替えさせた。一方、同館の日本画コレクションは、むしろ邸宅を飾るために描かれたもので、来客を迎えるための屏風や床映えする掛軸など、展覧会を舞台とする「展覧会芸術」とは逆行する「柔和な」性質と「吉祥的」内容を備えている。本展は、かつて住友の邸宅を飾った日本画を紹介しながら「床の間芸術」を再考する。この言葉、時代によって、あるいは画家によって、否定的にも肯定的にも使われているのが興味深かった。木島桜谷の金屏風着色『雪中梅花』の美しさ!これは毎年でも見たい。■町田市立国際版...2023年8-12月展覧会拾遺

  • 陶磁器あれこれ/青磁(出光美術館)、古伊賀(五島美術館)他

    レポートを書きそびれた展覧会が溜まっているので、思い出せるものから書いてみる。■出光美術館『青磁-世界を魅了したやきもの』(2023年11月3日~2024年1月28日)青磁の誕生前夜の灰釉陶器から、漢時代に成熟し始める越州窯、日本人が愛してやまない龍泉窯青磁など、中国における青磁の展開を中心に取り上げながら、高麗や日本、さらには東南アジアなどの青磁も紹介し、世界の人々を魅了した青磁の魅力に迫る。展示件数116件、ほとんどが同館のコレクションだが、徳川美術館や根津美術館からの出陳もあり。東博の青磁輪花茶碗『馬蝗絆』も来ていた。青磁は、もと南方で誕生したが、南北朝の時代に南北の文化交流が進むと、華北でも生産が始まった可能性がある、という解説を読んで、こんなところにも南北の多元性が!と興味深かった。あらためて認...陶磁器あれこれ/青磁(出光美術館)、古伊賀(五島美術館)他

  • 中国の多元性/物語 江南の歴史(岡本隆司)

    〇岡本隆司『物語江南の歴史:もうひとつの中国史』(中公新書)中央公論新社2023.11「江南」は、一般的には長江下流部の南方を指す用語だが、本書ではもう少し広く、中国語の「南方」の意味で使っている。北方=中原がまさに「中国」であるのに対して、南方=長江流域と沿海部は、中国を成り立たせると同時に「一つの中国」を否定し、中国の多元性を体現してきた地域なのである。春秋時代、中原の諸侯が連合して「中国」を名乗ると同時に、長江流域には楚・呉・越の諸国が起こり、北方と不可分にかかわる「江南」の歩みが始まる。以下、本書は「江南」を「長江上流(四川・重慶)」「長江下流(江蘇・浙江・安徽・江西)」「沿岸・海域(福建・広東)」「長江中流(湖南・湖北)」に分けて紹介していく。これらの地域が歴史に立ち現れるのが、この順序なのであ...中国の多元性/物語江南の歴史(岡本隆司)

  • 鳥取土産「白バラのシュトーレン」

    鳥取土産、大山乳業の「白バラのシュトーレン」を開封。表面にはシュガーパウダーがたっぷり!生地は、たぶんドイツ伝統の焼き方に比べると、軽め、やわらかめ。スパイスやラム酒の風味もあまり強くない。日本人の好みに寄せた「和風」のシュトーレンという印象。最初の1切れは紅茶でいただいたが、緑茶でもいけそうである。鳥取、名古屋の連続出張を終えて、あとは年末までのんびりの予定。鳥取土産「白バラのシュトーレン」

  • 日中近代史の記憶/偉人たちの邂逅(大倉集古館)

    〇大倉集古館企画展・大倉組商会設立150周年『偉人たちの邂逅-近現代の書と言葉』(2023年11月15日~2024年1月14日)明治6(1873)年の大倉組商会設立から150年を数えた本年、創設者・大倉喜八郎と、嗣子・喜七郎による書の作品とともに、事業や文雅の場で交流した日中の偉人たちによる作品を展示する。この秋、根津美術館の『北宋書画精華』には、色とりどりの料紙を貼り継いだ『古今和歌集序』が出ていたし、東博の『やまと絵』第4期(記事は書いていない)では、久しぶりの『随身庭騎絵巻』を見た。所蔵の名品を惜し気もなく他館に貸し出しているわりには、自館の展示がずいぶん地味で苦笑したが、歴史好きには興味深かった。1階は中国関係でまとめている。冒頭には黄色い縦長の料紙に七言の書。署名はなく、右肩に朱角印。温和でバラ...日中近代史の記憶/偉人たちの邂逅(大倉集古館)

  • 国宝と天体望遠鏡/皇室のみやび、他(皇居三の丸尚蔵館)

    〇皇居三の丸尚蔵館開館記念展『皇室のみやび-受け継ぐ美-』(第1期:三の丸尚蔵館の国宝)(2023年11月3日~12月24日)三の丸尚蔵館は、皇室ゆかりの文化財等を展示・公開する施設である。私は、ずっと昔から(戦後すぐくらいから)存在した施設のように思っていたが、調べたら、昭和天皇の崩御をきっかけに皇室の財産の整理が行われ、国有財産となった美術品類を適切な環境で保存研究し、一般に公開する目的で1993年に設置された。コロナ禍で全く気づいていなかったが、2019年12月から新施設への移行準備のため、しばらく休館していた。今年1月、新棟の第1期工事が完了し、開館記念展が開催される運びとなったのである。さらに大きな変化は、2023年10月1日付で、管理・運営が宮内庁から独立行政法人国立文化財機構へ移管されたこと...国宝と天体望遠鏡/皇室のみやび、他(皇居三の丸尚蔵館)

  • 画家と刑事のバディ/中華ドラマ『猟罪図鑑』

    〇『猟罪図鑑』全20集(愛奇藝、檸檬影視、2022年)中国では2022年公開。日本でも同時期から『猟罪図鑑~見えない肖像画~』のタイトルで知られているのは、そうか、国際版プラットフォームで日本語字幕版が配信されているためか、と気づき、いい時代になったなあと思う。主演の檀健次くんの出演作、最近見ていなかったのだが、『蓮花楼』で10年ぶりくらいに肖順堯さんを見て、檀健次くんの最近作を見たくなり、本作を見てみた。舞台は中国南方の北江市(ロケ地は厦門)。美術学校の教師を勤める青年画家・沈翊は、市警察分局の模擬画像師(似顔絵師)の職を引き受けるが、刑事隊長の杜城は反発する。7年前、杜城の恩師の雷刑事が殺害される事件が起きた。当時、画学生だった沈翊は、事件の鍵を握る女性の顔を見たはずなのに、絵に描くことができなかった...画家と刑事のバディ/中華ドラマ『猟罪図鑑』

  • 2023年12月鳥取砂丘と駅前歩き

    先週は・木金と鳥取出張だった。私費で後泊をつけて、土曜は現地の知人に鳥取砂丘を案内してもらった。鳥取砂丘は、たぶん20年以上前に、やはり仕事で鳥取に来たついでに観光したことがある。この日は山陰の12月とは思えない青空だった。馬の背と呼ばれる砂の尾根(標高47メートルとも)の下は黒っぽい湿地で、小さな池がある(同行者の話では、季節によって池の大きさが変わる、とのこと)。この風景、むかし訪ねた敦煌の月牙泉を思い出した。へろへろになりながら砂丘を登ると、紺碧の日本海が広がる。これは鳥取ならではの風景。馬の背の上は、かなり風が強かった。砂丘の周囲は、むかしながらのお土産屋さんが廃業するのと入れ替わりに、おしゃれな施設ができつつあった。2022年にオープンしたタカハマカフェは隈研吾氏の設計。展望テラスでコーヒーをい...2023年12月鳥取砂丘と駅前歩き

  • クリスマスリース2023

    今年も幡ヶ谷のラベイユ四季という花屋さんで、手作りのクリスマスリースを買ってきた。いまブログを検索したら、途中(北海道で暮らした期間)中断はあるものの、2008年から写真を掲載している。年に1回のお付き合いだが、顔なじみのおばさんに会えて嬉しかった。比較的小さめのサイズで、値段は税込み3,850円。ベリーやひまわりなど「実り」を感じさせるデザイン。左右に垂れているのは稲穂で「お正月まで飾ってもいいように」というのが気に入った。実は、スタンダードなクリスマスリースでも、毎年、正月七日までそのまま飾っているのだが。去年の今頃は喪中だったので、心もち控えめに過ごしていたが、今年は年末年始のお祝い気分をしっかり味わいたいと思っている。クリスマスリース2023

  • 徽宗の猫と桃鳩/北宋書画精華(根津美術館)

    〇根津美術館特別展『北宋書画精華』(2023年11月3日~12月3日)日本に伝存する北宋時代(960~1127)の書画の優品を一堂に集めた展覧会。「きっと伝説になる」をキャッチコピーに、力の入った展覧会で、北宋の絵画作品21件(墨摺、関連作品を含む)、経巻・書跡10件、舶載唐紙を使った古筆切9件が集結していた。ただ、私の場合、大阪市博とか藤井斉成会有鄰館とか黒川古文化研究所とか、最近ご無沙汰しているけれど、たぶん一度は見ている作品が多かった。その中で最も「レア」なのは、12/1~3の3日間だけ展示される徽宗皇帝筆『桃鳩図』だと思ったので、展示リストが公表されるとすぐ、最終日12/3の朝イチの日時指定券を取って、あとはじっと待っていた。そうしたら、このブログに大和文華館の『いぬねこ彩彩』を見て来た感想のコメ...徽宗の猫と桃鳩/北宋書画精華(根津美術館)

  • 覇者の交代/都会の鳥の生態学(唐沢孝一)

    〇唐沢孝一『都会の鳥の生態学:カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰』(中公新書)中央公論新社2023.6千葉県市川市に住み、都立高校に勤める著者が、半世紀以上にわたって「都市鳥」を観察してきた経験をまとめたもの。都市鳥とは、都会に生息する鳥をいう。都市環境に最初に適応したのは、すでに農村で人に適応していたスズメやツバメ、カラスで、その後、さまざまな野鳥が進出してきた。日本では、1960~70年代に、キジバト、ヒヨドリ、ハクセキレイ、イワツバメ、ユリカモメが進出し、80年代には、チョウゲンボウ、コゲラ、カルガモが見られ、いったん姿を消したカワセミが東京23区に戻ってきた。2000年代には猛禽類のオオタカやハヤブサが都市で繁殖するようになった。一方、中国大陸や東南アジアから持ち込まれた外来鳥類の野生化...覇者の交代/都会の鳥の生態学(唐沢孝一)

  • 絶望、たまにハッピーエンド/円(劉慈欣)

    〇劉慈欣;大森望、泊功、齊藤正高訳『円:劉慈欣短編集』(ハヤカワ文庫)早川書房2023.3『三体』の劉慈欣の短編集。1997年に発表されたデビュー作『鯨歌』から2014年の『円』まで13編を発表順に収録する。豪華なクルーズ船に乗った謎の西洋人たちが登場する『鯨歌』は、普通の短編SFという感じ。1999年の『地火(じか)』、2000年の『郷村教師』は、舞台が近現代中国の辺境に設定されていて、劉慈欣らしさが濃厚である。典型的(≒通俗的)なSFらしさ(科学的・進歩的・未来的)から最も遠い、永遠に続く貧困と停滞の世界にSFが接続するところが、このひとの小説の魅力の一つではないかと思う。『栄光と夢』は、アメリカ合衆国とシーア共和国の戦争の代替手段として、両国のみが参加するオリンピックが開催されるという皮肉な物語。こ...絶望、たまにハッピーエンド/円(劉慈欣)

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