アルバイトにあまり多くを求められても困る。「市民健康だより」の取材の時だって実は怒られてばかりだったし、写真が笑顔だったのはたまたまに過ぎない。気難しい陶芸家・前田正太郎さんが気を許してくれたわけではないのだ。ましてや戦争体験の取材なんて受...
NHK-FMのラジオドラマ番組、青春アドベンチャー・アドベンチャーロードなどの紹介ブログです。
NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。
銀河英雄伝説に出演の声優のお声を聞けるオーディオドラマ(自由惑星同盟・その他編)
アニメ銀河英雄伝説(石黒昇版、Die Neue These)の声優さんが出演されているNHK-FMのオーディオドラマを紹介する第2弾。前回の銀河帝国編に続いて今回は自由惑星同盟及びその他の勢力編です。実はこの企画は「謙信サマは今日も気まぐれ...
銀河英雄伝説に出演の声優のお声を聞けるオーディオドラマ(銀河帝国編)
【特集:青アド・ポーカー23】アニメ「銀河英雄伝説」に出演した声優さんつながり久しぶりのアニメ関連企画です。今回はアニメ銀河英雄伝説(石黒昇版、Die Neue These)の声優さんが出演されているNHK-FMのオーディオドラマを紹介いた...
母と浜辺の宝石を探した日から15年。東京の大学を卒業したあと私は長崎に帰って長崎びいどろの職人見習いになった。でも母には東京で大きな会社で働いている言っている。職人見習いといっても実質的には店番のバイト。言えるわけない。たまに工房を使わせて...
謙信サマは今日も気まぐれ 作:池谷雅生(青春アドベンチャー)
メガネ歴女・富香の目下の悩みは修士2年になるのに論文テーマが決まっていないこと。しかしある日、ふと気が付いたら戦国時代の女性・お松の中に意識だけタイムリープしていた。しかもおまつは富香の推しの武将・上杉謙信の侍女だという。おまつを通して謙信...
中学まではよかった。数学で躓きが始まったのは、あの虚数という得体のしれない数が登場してからだ。だけどわが家は経済的に国公立しか選択肢がない。だから数学を捨てるという選択肢もない。仕方なく塾の先生に相談したところ「高校数学 よくわかる虚数 躓...
大型トラックの運転手に女性は少ない。いたとしても子供を産むまでの仕事などと言われて、珍獣扱いされるのが関の山だ。今日もドライブインで声をかけられた。本当に面倒くさい。だからバスがなくなって困っている男性を乗せたのも気まぐれだ。いや私のトラッ...
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両親を亡くしてから心の平衡が保てなくなってしまった夏希(なつき)。だけど、いつも一緒にいてくれるおじいちゃんに支えられてようやく保健室に登校できるようになった。でもみんなと同じ時間は無理だから、朝早く登校して養護教諭の京子先生が保健室のカギ...
2025年に「FMシアター」、「特集オーディオドラマ」において新作として放送された作品のうち、当ブログにて紹介記事を書いた作品の一覧です。あくまで記事を書いた作品の一覧であり、全作品ではないことにご注意ください。まだ紹介作品数が少ないですが...
恋人からプロポーズされたとき、どうして即答できなかったのか自分でもわからない。気持ちを整理するためにひとりで出かけた香川旅行。とにかく自分だけの空間にいたくてレンタカーを借りた。でも答えは出ない。1日延長して迎えた最終日。深い理由もなくネッ...
アニメ銀河英雄伝説(石黒昇版、Die Neue These)の声優さんが出演されているNHK-FMのオーディオドラマを紹介する第2弾。前回の銀河帝国編に続いて今回は自由惑星同盟及びその他の勢力編です。実はこの企画は「謙信サマは今日も気まぐれ...
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2023年に「FMシアター」、「特集オーディオドラマ」において新作として放送された作品のうち、当ブログにて紹介記事を書いた作品の一覧です。あくまで記事を書いた作品の一覧であり、全作品ではないことにご注意ください。
2024年に「FMシアター」、「特集オーディオドラマ」において新作として放送された作品のうち、当ブログにて紹介記事を書いた作品の一覧です。作品数は今後まだまだ増えていく予定です。気長にお待ちください。
客船「サーカス」。横浜・大桟橋を出港し108日間で世界一周をするこの豪華客船に乗るためにはカップルで800万から5000万の費用がかかるそうだ。ただ私が業務乗船するのはプーケットまでの9日間だけ。売れない歌手の需要なんてそんなもの。この9日...
どこかおかしいところがあるわけではない。あえていえばスニーカーにしてはタイトであることくらいか。しかしどうしても本物であるという確信が持てない。本物と断言できないのであれば店頭に並べるわけにはいかない。スニーカー専門店として信用にかかわる。...
イタリア半島とアフリカ大陸の中間、地中海に浮かぶ島・マルタ島。16世紀、その島は聖ヨハネ騎士団が支配する独立国家だった。しかし、世はオスマントルコ帝国の最盛期。キリスト世界の最前線たるマルタ島は、すなわちオスマントルコの次の侵略先ということ...
「ちょっと待ってください!」一言だけ残して走り去った男が駆け戻ってきた。「これ、友郎さんに差し上げます。」自称、気遣いができて、謝るということもできるという学芸員さんだが僕の気持ちを推しはかることはできないようだ。でも。「これはゴニアタイト...
昨日の記事「『逆光のシチリア』の照会文をAIに書いてもらってみた」で興が乗ったので、今度は近年の私の一押し「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」の記事をChatGPTに書いてもらいました。最新のChatGPT4o(無料だと機能制限あり)は2023年12月...
以前「今、世の中は第3次AIブーム!」から始まる特集記事を2つ(その1、その2)書いたのですが久しぶりにAIシリーズの第3弾を書きます。今回はずばりAIに青春アドベンチャーの紹介記事を書いてもらいましょう!、です。題材は2024年リスナーア...
10年代以降の我が国アイドルシーンをけん引しているAKB48及びその姉妹グループ(いわゆる「AKB48グループ」)及びその公式ライバルとされる「乃木坂46」などの坂道シリーズ。AKB48がスタートした2005年からすでに20年が経過し俳優活...
この記事は、当ブログで紹介したFMシアター等の単発ラジオドラマ番組の作品へのリンクのための記事です。FMシアターなどの紹介方法本ブログでは、NHK-FMのラジオドラマ番組「青春アドベンチャー」を中心に、帯ドラマの作品を主に紹介しています。一...
「ソラのスケッチブック」、「風のスケッチブック」に続くスケッチブックシリーズの第3弾、それがこの「雨のスケッチブック」です。とはいえ公式ホームページでスケッチブックシリーズとして紹介されたことはまだないのでシリーズといえるかは微妙なところではあります。 現在の青春アドベンチャーでは「ストーリーボックス」が継続しているので、スケッチブックもシリーズだとすると2シリーズ併存。 不思議屋シリーズ、ライフシリーズ、10人作家シリーズの3シリーズが併存していた20年ほど前ほどではないですが、意外とオムニバスが増えています。 ただ、スケッチブックとストーリーボックスの違いは相変わらずイマイチわからないのですねど。
都会の雑踏の中、生ギター一本で歌うストリートミュージシャン・セージ。 根拠のない自信を頼りに1日も欠かさず路上に立ってきた彼を待っていたのは恋人からの別れの言葉だった。 もう誰に向かって歌っているのかもわからなくなったセイジ。 そんな彼にひとりの老婆が声をかけてきた。 「感心しながら聴いていたのよ、「天使の気持ちをよく知ってるなあ」って。もしかしてあなたも元天使?」
なんて馬鹿なんだろう。軽蔑だわ。結婚なんかしなればよかった。 あなた、いつになったら仕事が来るの。いつになったらお金が入ってくるの。 貧乏の呪いよ。あぁ洋服が欲しい。死んでほしい。うんざりだわ… 結婚して40年になる頼子と秀治の夫婦。 秀治は作家だが、コロナ以降仕事がなく家でぶらぶらする毎日。 お金もないのに何事に対してもお気楽ですぐにはしゃぐ秀治に、頼子はイライラしてならない。 そんな中、頼子は近所のイタリア料理店の若きシェフ中村に心惹かれるのだが。
1859年。貧しい身分から身を起こし弁護士として大貴族に取り入ることに成功。 美しい令嬢ペトロニラの関心も得、自分の立身出世のチェックメイトも近づいている。 アウレリオは得意の絶頂にあった。 しかし、公爵の別荘で過ごすペトロニラとのひと夏に2人の男女と出会ったことにより彼の運命は変わりだす。 ひとりは公爵の農地管理人の息子ベネデット。 もうひとりは英国から来たインゲストル子爵夫人アリス。 激動のシチリアで彼らの運命はいかに。
中学の頃、好きなものの話が長くてしつこいと言われた。 だからなんなん?ってイラっとされた。 そんな私だから高校に入学しても親しい友人はできなかった。 でも東京から来た転校生、深瀬さんは突然話しかけてきたのだ。 「森さんのお家って銭湯なの?かっこいいね!」 すぐに親友になった私達。 あたしの言うことに笑ってくれる人は初めてだった。 人に秘密を打ち明けられるのも初めてだった。 心地いい関係。 でも2年の夏に少し変化が生じたのだ。
本作品「近未来物語」は筒井康隆さんの短編小説から5編を選んでラジオドラマ化した作品で、NHK-FMの「ふたりの部屋」で放送されました。 選択は「10年から20年すればこんな世界になるのではないか」という視点からなされているそうで、いわば「近未来」を舞台にしたディストピア的な設定の作品群です。 ただ本作品放送時から40年経過しているこの記事の執筆時点からみると未来予想としては全くあっていませんでしたね。 なお5作品のうち「ワースト・コンタクト」は短編集「宇宙衞生博覽會」に、それ以外の4作品は短編集「心狸学・社怪学」に収録されています。
本作品「風のスケッチブック」はNHK-FM青春アドベンチャーで放送されたオーディオドラマで、1回15分完結の独立したショートストーリー5篇から構成されるオムニバス作品です。 「○○のスケッチブック」というタイトルの作品は2021年の「ソラのスケッチブック」に次いで2作品目ですが、これをNHKがシリーズとして扱っているかは微妙なところ。 また、最近、青春アドベンチャーで5作品制作されている「ストーリーボックスシリーズ」とどう棲み分けているのかもよくわかりません。 かつて併存していた「不思議やシリーズ」と「ライフシリーズ」は、制作局が分かれていたほか、内容面の傾向も違っていました。 この辺は今後明確になっていくのかも知れません。
【特集:演出家・脚本家別一覧の記事一覧】 オーディオドラマについて、原作者視点でランキング形式で紹介した記事はこちら、オリジナル作品の脚本家についてランキング形式で紹介した記事はこちら、劇伴を作成された作曲家をランキング形式で紹介した記
この記事は当ブログで紹介した中澤香織さんによる脚本・脚色作品の一覧を紹介するものです。 脚本家別の一覧を作るのは、藤井青銅さん、じんのひろあきさん、並木陽さんに次いで4人目になります。 それでは、並木さんが担われた役割ごとに一覧表にします。
1300年ほど昔の奈良時代。 安芸国(あきのくに)佐伯郡(さえきのこおり)の瀬戸内海に面する海辺の里に、街道を行く早馬(はゆま)のための駅家(うまや)が設置されていた。 少女トトメは駅家の長の娘である。 ある日、街道が崩れた影響で泥だらけになった一団を独断で駅家にかくまうことを決める。 その一団は肥後国からやってきた力士とそれを引率する大伴クマゴリなる青年の一団だった。
この記事はNHK-FMのラジオドラマ番組「アドベンチャーロード」で放送された作品の各年の一覧記事へリンクするための記事です。
天平の時代。 今の京都、木津川のほとりでは新しい都の造営が始まっていた。 後に恭仁京(くにきょう)と呼ばれることになるその都は、平城京で起こった様々な悪しき事による祟りを恐れて遷都するためのものだが、貧しい庶民にとっては生活を圧迫するものでしかなかった。 その造営の普請場に春麻呂という少年がいた。 親方にこき使われる毎日に反発の気持ちを強めて春麻呂だが、ある日、鳥の糞と共に堕ちてきた一枚のお札のようなものを入手する。 驚くべきことにそのお札はしゃべることができたのだ。
奈良時代、能登半島は羽咋の浜。 当時、能登は大陸の国家・渤海との交易の窓口であった。 ある日、素潜り漁で生計を立てる少年ヒコナの前で、異国の船が難破する。 ようやく助け出した異国の老人キュロスはひとつの瑠璃の壺を大事に抱えていた。 彼は大陸で出会った日本人の友人にこれを届けるために日本に来たという。 それが人生最後の望みだという老人に請われたヒコナはともに都へと旅立つのだが…
銀座で煙草道具屋を営む相四郎は山東京山(さんとう・きょうざん)のペンネームを持つ戯作作家でもある。 浮世絵師であり大作家でもあった山東京伝(さんとう・きょうでん)の弟だが、流行作家としては兄に比肩すること叶わず、有り体にいって鳴かず飛ばず。 なんとか作家として名を残そうと考えた相四郎は、越後塩沢の縮緬問屋、鈴木儀三治がかつて書いて兄のもとに持ち込んだノンフェクション文学『北越雪譜』(ほくえつせっぷ)のことを思い出した。 江戸の人たちには思いもよらない豪雪地帯の生活を克明に描いたこの作品であれば必ずヒットするはず。これの編者、あわよく作者として歴史に名を残せないものか。 しかし『北越雪譜』の原稿は今や流行作家である曲亭馬琴が預かっている。彼とは因縁浅からぬ中なのだが…
極寒の奥日光にもまた春がやってくる。 ただ、このあたりには観光するものはなにもない。 地元の人間ですらめったに通らない山道を若い女性が歩いているのはやはり不審だ。 そう考えてモーリーこと矢部吉森は彼女に声を掛けたが、彼女は自分に会いに来たという。 確かに国産メープルシロップは珍しい。 ふもとで聞けばこの山に行けば会えると言われるのも確かだろう。 しかし、若い女性がメープルシロップの製造現場を見るためだけに、老人がひとりで暮らす雪深い山中まで来るものだろうか。
親父は冴えない火消だった。 二つ名は「鉄鯢(てつけい)」。 「鉄」で「鯢(さんしょううお)」だなんて鈍くさい親父にお似合いだ。 それに引き換え、あの人、伊神甚兵衛様はまぶしかった。 「大物喰い」「鳳(おおとり)」「日ノ本一の火消」。 初めは大げさと思われた「炎聖」の称号でさえもやがて誰もが相応しいと認めるようになった。 それなのに最後の最後、救ったのは親父、救われたのは伊神様だった。 火付犯に堕ちた伊神様の心を救い、業火の中、最後まで命を救うことを諦めなかった親父。 ふたりの死後、頭になった自分の口から出るセリフはいつしか親父と寸分たがわぬものになっていた。 「火消はどんな命でも救うもの。それが悪人であろうとも。」 しかし、今また起こる怪火。そして死んだはずの伊神様の影。 伊神様は生きているのか、そして再び復讐を始めたというのか。 だとしたら親父の犠牲は一体何だったのか。 いや、俺は人の強さを信じる。親父の最期の言葉はこうだったではないか。 「人の強さは人の弱さを知ることだ。それを喰らって人は強くなる。行け源吾、決して諦めるな。喰ってやれ!」
結婚して銀河の果てまで金を探しに行こう。 それがプロポーズの言葉だった。 人工冬眠とワープ航法を繰り返して100年余り宇宙を彷徨った末に、地球から200光年離れた辺境の星でやっと見つけた金鉱脈。 その頃には2人の息子に恵まれ家族は4人になっていた。 さらに8年を費やして採掘・精錬し続けた結果、小型宇宙艇に乗せられる限度いっぱの123本もの金塊を得ることができた。 今後は12回のワープと48年の人工冬眠により、所要実働時間4年で地球に帰ることができる。 2人の息子にとっては両親以外に初めての人間に出会うことになる。 両親のように心から愛しあえる伴侶を見つけることができるのだろうか。 愛がなければモモタロー号に積んだ莫大な金も一文の価値もないと同然なのだから。
2018年「火喰鳥(ひくいどり)羽州ぼろ鳶組」から始まった今村翔吾さん原作の羽州ぼろ鳶組(うしゅうぼろとびぐみ)シリーズのオーディオドラマ化。 2024年、遂に前半の集大成ともいえる第7弾「襲大鳳(かさねおおとり)羽州ぼろ鳶組」にたどり着き
夏休みに家族で小田原のおばあちゃん家を訪ねるのは毎年の行事。 でも今年はひとりだ。お母さんは用事で来られない。お父さんと話し合いをするから。 それに今、お母さんは性格のキツイおばあちゃんと話す気力がないのだろう。 ひとりで訪ねてきた私をおばあちゃんは早速、お墓参りに連れて行った。 そこでわたしは墓に寺坂幸次郎という38歳で亡くなった人の名前を知る。 おばあちゃんに聞くと、この人はおばあちゃんのお父さん、つまり私のひいおじいちゃんだという。 ひいおじいちゃんは戦争から帰ってきた後、心を病み、その人生の大部分を精神病院で過ごしたらしい。そんな話は初めて聞いた。 いるけど、いないみたいな透明人間にされてしまったひいおじいちゃんのこと、おばあちゃんは話したくないみたいだけど…
12世紀半ば。地中海の東に位置するシリアの地。 十字軍の遠征からすでに半世紀が経過していたが、キリスト教徒のエルサレム王国とイスラム教徒の諸王国に分裂し、まさに乱世の状況にあった。 そんな中、シリア北部の町アレッポにひとりの英雄が現れる。 ザンギー朝第2代の君主マフムード。 彼は、隣国ダマスカスからアーミナを娶る一方、宿将シール・クーフとその甥ユーセフをエジプトに送りその政治に介入。着々と勢力圏を広げていた。 これは「ダマスカスの花嫁」と呼ばれた女と「信仰の光」、「信教の誉れ」と呼ばれたふたりの男。3人の男女の絡み合った運命の物語である。