S・T・コールリッジ「老いたる水夫の賦」第二部

S・T・コールリッジ「老いたる水夫の賦」第二部

第二部陽は今や右手から昇った海から昇り来たって霧に隠れたまま左手だった海へと沈むときにはそして善き南風が後ろから吹きつけていたが優しい鳥は随わず如何なる日にも餌にも戯れのためにも来たらなかった水夫らの呼び声には俺のした忌むべき行いが水夫らを嘆かせた皆が断じていたのだ俺はあの風を吹かせてくれた鳥を殺したのだと悪党が!皆がそう云った風を吹かせてくれた鳥を屠るなどと朧でもなく赤らみもせず神ご自身の頭のように輝かしい陽が昇ってくると皆は断じた俺は靄と霧とをもたらした鳥を殺したのだと正しいことさ皆がそう云った靄と霧をもたらすような鳥どもを殺すのは晴れやかな風が吹いて白い泡が舞い散り船の跡が自在に随ってきた俺たちが初めてあの凪いだ海を切り裂いたのだ風が落ちこみ船足が落ちるのは能うかぎりの悲しみだった話すのはただこの海の凪を...S・T・コールリッジ「老いたる水夫の賦」第二部