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私的海潮音 英米詩訳選 https://blog.goo.ne.jp/kozakana_2009/

主に十七から二十世紀初頭の英語詩の訳を試みています。多いのはT・S・エリオット。

ひっそりと一人で続けていた英詩翻訳マラソンです。二日にいっぺん二、三行ほど牛歩の歩みで細々と。人さまにお見せするのは訳のみで! と意気込み、二年来匿名でやっていましたがだんだんさみしくなりました。勇気をだして世の中? とつながってみよう。ので、あまりにも目に余る誤訳が目につきましたらぜひともご指摘ください。ちなみに私は英文学は素人に毛が三本生えた程度です。

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2011/06/04

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  • ディラン・トマス その善き夜に粛として赴くことなかれ

    ★久しぶりに更新いたします。ウェールズの詩人ディラン・トマスのDonotgogentleintothegoodnightです。Rage,rageのリフレインに高村光太郎の「冬が来た」の一節、「冬よ、僕に来い、僕に来い/僕は冬の力、冬は僕の餌食だ」を思い出しました。定めに抗う人間の傲慢なる悲哀。これこそが悲劇です。ディラン・トマス〔1914~1953〕その善き夜に粛として赴くことなかれその善き夜に粛として赴くことなかれ老いたる者は日の終わりに腹立ち喚くべきだ怒れ怒れよ光の死に抗して賢い者らがその末に闇こそ義だと知ろうとも彼らの言葉は如何なる明かりもかき立てない故に賢者らがその善き夜に粛として赴くことはない善き者たちは今際の波で何と輝かしいかと叫ぶ彼らの儚い行いが瑞々しい日に踊ったならばと怒れ怒れよ光の死に抗して飛...ディラン・トマスその善き夜に粛として赴くことなかれ

  • S・T・コールリッジ「老いたる水夫の賦」第二部

    第二部陽は今や右手から昇った海から昇り来たって霧に隠れたまま左手だった海へと沈むときにはそして善き南風が後ろから吹きつけていたが優しい鳥は随わず如何なる日にも餌にも戯れのためにも来たらなかった水夫らの呼び声には俺のした忌むべき行いが水夫らを嘆かせた皆が断じていたのだ俺はあの風を吹かせてくれた鳥を殺したのだと悪党が!皆がそう云った風を吹かせてくれた鳥を屠るなどと朧でもなく赤らみもせず神ご自身の頭のように輝かしい陽が昇ってくると皆は断じた俺は靄と霧とをもたらした鳥を殺したのだと正しいことさ皆がそう云った靄と霧をもたらすような鳥どもを殺すのは晴れやかな風が吹いて白い泡が舞い散り船の跡が自在に随ってきた俺たちが初めてあの凪いだ海を切り裂いたのだ風が落ちこみ船足が落ちるのは能うかぎりの悲しみだった話すのはただこの海の凪を...S・T・コールリッジ「老いたる水夫の賦」第二部

  • S.T.コールリッジ「老いたる水夫の賦」第一部

    *久々に更新いたします。半端なところで止まっている「ミルトンⅡ」の続きを、と思いつつ、Twitterで無料の朗読が公開されていたコールリッジのTheRimeofAncientMarinerの第一部を訳してみました。後半に出てくる「信天翁」はアホウドリです。この日本名もう少し何とかならないものか……S.T.コールリッジ老いたる水夫の賦梗概航路を渡る船が如何にして嵐のために南極へ至る凍てついた域へと運ばれ、そこから大いなる太平洋の熱帯地方へと針路を向けて、如何なる奇妙な事柄が降りかかったかと、そのようなやり方で老いたる水夫が如何にして自らの国へと帰り着いたか。第一部老いたる水夫が三人の内の一人を呼び止めた「汝の長い灰色の髭ときらきら輝く目によって今なぜ汝はこの俺を呼び止めたのか?花婿の扉は広く開けられ俺は近しい身内...S.T.コールリッジ「老いたる水夫の賦」第一部

  • しばらく休みます。

    「失楽園」および「ミルトン1」の拙訳をお目通し下さっていた方へ。このとこれ少々忙しないため、趣味の翻訳をしばらくやめておこうと思い立ちました。とくに「ミルトン1」のほうは中途半端はところで止めてしまって恐縮の限りです。4月を過ぎたらまた少しずつ再開しようと思っております。そのときはどうかまた宜しくお付き合い下さいm(__)mしばらく休みます。

  • T・S・エリオット「ミルトン」 第四段落〔翻訳〕

    SelectedProseofT.S.Elliot[ed.ByFrankKermode]pp.258-264T・S・エリオット「ミルトンI」〔1936年〕第四段落〔259頁〕ミルトンについて、私の論点にとってもっとも重要な事実はその失明である。人生の半ばで視力を失うことがある者の詩作の性質全体を決定するに足るというつもりはない。失明はミルトンの個性と性格や、彼の受けた固有の教育と合わせて考えられるべきである。それは、また、彼の音楽の技術への傾倒と熟練伴結び付けられるべきである。もしミルトンが鋭い諸感覚――つまり五感すべてについて――の持ち主であったなら、失明はさしたる問題ではなかっただろう。しかし、かつてはそうであったその感性の鋭さを、書物を読むことによって早くに萎れさせたものの、生来の天与の才は聴覚にあったよ...T・S・エリオット「ミルトン」第四段落〔翻訳〕

  • 永遠の春〔自作小説〕第二章

    第二章撫子山上の前司は口約を護った。父の死に二年遅れて前司の死んだ後に、数多い息子の一人が『類聚歌林』の一から六までを櫃に納めて石城へと届けに来た。煌びやかな拵えの巻七と異なり、薄茶の穀紙にびっしりと文字の並んだ巻子で、帳簿の裏に書きつけた紙片が糊で継いであったり、あちこちに直しが入っていたりした。乱れた筆の但し書きを小声で読み上げるたびに、別れ際の前司の愛しげ〔カナしげ〕な声音が思い出された。この前司の死んだ年に、古麻呂が遣唐大使とともに留学生として唐土に遣わされたのだった。大使が私たち兄妹には母方の祖父の同母弟にあたる多治比大成だったため、坂上の叔母が采配を振るって石城でもなかなか賑やかな見送りの宴が開かれた。一行は二年を唐土で過ごし、天平七年の夏の初めに都へ帰ってきた。この折の帰朝のことはよく覚えている。...永遠の春〔自作小説〕第二章

  • T・S・エリオット「ミルトンⅠ]第三段落〔翻訳〕

    SelectedProseofT.S.Elliot[ed.ByFrankKermode]pp.258-264T・S・エリオット「ミルトンI」〔1936年〕第三段落〔p.259〕印刷物の上に批評家として現れる幾らかの者を含む諸個人の大きな集団が、「偉大な」詩人に対するいかなる酷評をも平和に対する違反のように看做している。理不尽な偶像破壊行為か、あるいは単なるやくざ者のやり方のように。私がミルトンに対して加えねばならない尊厳を傷つける類の批評は、ある種の致命的な面において善き詩人であることは偉大な詩人であることよりも重要なのだということを理解できない類の諸個人に向けたものではない。それについては、私が、我々自身の時代においてはただ裁判の陪審団だけが最も能力のある試作の従事者なのだと考えていることを述べておくべきであ...T・S・エリオット「ミルトンⅠ]第三段落〔翻訳〕

  • T・S・エリオット「ミルトンI」第二段落〔翻訳〕

    SelectedProseofT.S.Elliot[ed.ByFrankKermode]pp.258-264T・S・エリオット「ミルトンI」〔1936年〕第二段落〔258~159頁〕ある者が偉大な芸術家なのかもしれないにせよ、やはり悪しき影響力を具えることには、多くの人々が同意するだろう。十八世紀の悪しき韻文における悪さは他の何人よりもミルトンの影響が大きい。彼は間違いなくドライデンやポープよりも大きな害を与えたし、おそらくこの二人の詩人に、とりわけその影響力のために後者へと注がれた相当の量の悪口は、ミルトンへと移されるべきである。しかし、事を単に「悪しき影響力」という用語で表すのは必ずしも由々しい咎めをもたらすことにはならない。というのも、我々が問題をこれらの用語で言明するときには、相当の量の責任が、邪なもの...T・S・エリオット「ミルトンI」第二段落〔翻訳〕

  • T・S・エリオット「ミルトンⅠ」第一段落〔翻訳〕

    *失楽園には相変わらず行き詰り続けている上、自作小説の加筆にも案外手間がかかるため、困ったときのエリオット頼みで再び論考を訳してみます。題名は「ミルトンⅠ]。しかし、どうもエリオットという方はミルトンがお嫌いだったらしい……SelectedProseofT.S.Elliot[ed.ByFrankKermode]pp.258-264T・S・エリオット「ミルトンI」〔1936年〕第一段落〔p.258〕なるほどミルトンが極めて偉大な詩人であることは認められて然るべきだが、何がその偉大さを成り立たせているかを定めるのは一種の難問である。分析するに、彼の不利となる評点は数と重要さの双方で彼の信用を高める評点を凌いで現れる。一人の人間としての彼は反感を持たれがちである。倫理主義者の観点からしても、神学者の観点からしても、政...T・S・エリオット「ミルトンⅠ」第一段落〔翻訳〕

  • 〔自作小説〕永遠の春 第一章

    *ミルトンが再び行き詰ったためしばらく自作の小説でお茶を濁します。遅ればせながら流行り〔?〕に乗って万葉集題材、語り手は大伴家持。以前このブログでお目にかけていた同タイトルのものを加筆修正しております。英文学はまだしも古代日本については全く門外漢なので、誤字脱字はむろん、時代考証上の誤りや詩歌の解釈の間違いなど、お気づきの誤謬がありましたら是非是非ご指摘ください。永遠の春Nota,mortuumviverepergloriam――死びとらよ誉れに拠りて生きよ第一章土牛故郷――という言葉を想うとき、初めに浮かんでくるのは、うらうらと白く鮮やかな筑紫の春の陽射しだ。唐渡りの白梅が薫り高く開き、空は高く晴れて、風がみな仄かに潮の香を含んだ南の春の様だ。冬永い因幡の国府で水を含んだ重い雪が音もなく積もる気色を感じながら...〔自作小説〕永遠の春第一章

  • 失楽園 178~191行目

    *177行目から引き続きサタンの一人称の語りです。192行目からいわゆる「地の文」に戻ります。楽園の喪失ジョン・ミルトン巻一178~191行目178我らをして好機を逃させるな蔑みかあるいは179満ちたりた怒りが我らの仇から生じさせたものを180見るがよい彼方のもの寂びた野を打ち棄てられて181荒んだ野の朽ちた座と光の裂け目を182何がこの蒼ざめた焔の燦めきが183衰え荒んでゆくのを護る?其方へと我らを向かわせよ184この燃え盛る大波のうねりから離れて185そこでもし幾何の安らぎが潜むなら安らぎ186傷めつけられた力を集め直して187語らうのだ如何にしてこれより最もよく188我らの敵を害し如何にして己らの損失を償い189この悍ましい災いを覆すかを190もし絶望からくる不屈の意志がなければ191希望〔ノゾミ〕からど...失楽園178~191行目

  • 失楽園 169~177行目

    *引き続き「大いなる悪霊」すなわちサタンのベルゼブブへの返答です。楽園の喪失ジョン・ミルトン巻一169~170行目169しかし見よ怒れる勝利者が170報復と追撃の下僕〔シモベ〕らを171天の門へと呼び戻した硫黄の如く燃え盛る歓呼が172嵐のなかで我らの後ろにあがって過ぎたのちには173焔の如きうねりがのべられて天の絶壁から174墜ちる我らを受けとめた赤光と激烈な175憤怒によって飛び来たる雷は176おそらくはその矢を費やし尽くしたのだろう今や177漠たる果てない深みを貫いて轟くのをやめてしまった169ButseetheangryVictorhathrecalled170Hisministersofvengeanceandpursuit171BacktothegatesofHeav’n:thesulphurous...失楽園169~177行目

  • 失楽園 156~168行目

    156するとすぐさま大いなる悪霊が応えた157墜ちたる智天使よ弱るのは惨めな158振舞いか苦難だがこれだけは確かだ159何であれ善を行うことは我らの任ではない160邪〔ヨコシマ〕に振舞うことだけが我らの歓びなのだ161我らの抗うかの者の気高い意志に162叛く者としてもしかの者の摂理が163我らの悪から善を生み出そうと求めるなら164我らの骨折りはその結びを貶めるべく努めて165善から更に悪の手立てを捜し出さねばならぬ166それがしばしば巧く運べばあるいは167かの者を嘆かせるやもしれぬもし俺がしくじらず168定めのままの意図からなるかの者の内奥の弁護者たちをかき乱せるならば156Wheretowithspeedywordsth’Arch-Fiendreplied.157Fall’nCherub,tobeweak...失楽園156~168行目

  • 失楽園 143~155行目

    *128行目から引き続きサタンの呼びかけに対するベルゼブブの返答です。楽園の喪失ジョン・ミルトン143しかしもしかの者すなわち我らの征服者が(今や144かの者が武力において全能であると信じるのは145我らほどの武力を圧倒し得たからに他ならない)146我らの精神〔ココロ〕と強さとを痛みを忍んで147耐え得るほどにも欠けなく強いまま残すことで148己が憤怒を充たしていたり149さらに力ある奉仕を己が奴どもに150戦の権利としてその務めのあたう限り負わせて151此処にて地獄の中心で焔のなかで働かせたり152仄暗い淵で己の使い走りを務めさせたりするなら153一体何の役に立とう?たとえ我らが154己らの強さは減じられぬと非時〔トクジク〕の155処罰に耐えうる非時の存在だと感じていようと143ButwhatifheourC...失楽園143~155行目

  • 失楽園 125~142行目

    楽園の喪失ジョン・ミルトン125導きの天使はそのように語った痛みのうちにあろうとも126声高に自賛してだが深い絶望に苦しみながら127すぐさま応えを返したのは大胆なる同輩だった128おお公〔キミ〕よ座につく多くの能天使の首長〔オビト〕よ129戦仕度を調えたセラフの群れを闘いへと導き130汝の指揮のもとで怖れを知らぬ凄まじい行い131によって天の恒なる王を脅かして132かの者の至高の優越を強さや133機会や定めによって覆せるかを試みた方よ134余りにも私は眺めて悔やみすぎたこの悍ましい出来事が135嘆くべき転覆と穢れた挫折とともに136我らをして天を失わせしめた様をかの遍く力ある敵が137恐るべき破壊によって神々と天なる精粋を138消し得るかぎりの低みに我らを139横たえたことを精神〔ココロ〕と気概は140不屈の...失楽園125~142行目

  • 失楽園 110~124行目

    楽園の喪失巻一ジョン・ミルトン110その誉れをかの者の瞋恚も権勢を決して111俺から騙し取れはしまい頭を低めて恩寵を求め112嘆願して跪いてこの武力への怖れから己が帝国を113疑うにはあまりに遅すぎたかの者の114御稜威を崇めるのは実は賎しいことであり115この転落よりもさえ不名誉で116恥ずべきことだ定めによって神々の強さと117この至高の天の実在は衰え得ぬうえに118この大いなる出来事を通じて119武力においては劣らなければ先見では優っていたのだから120我らはもっと上首尾な希望をもって心を定め121力か策によって決して譲らぬ非時〔トキジク〕の122闘いを執り行うのがよいのだ我らの大敵に対して123今や勝ち誇ってただ独り君臨する歓びに124浸りすぎて天の専制を保ちづづける者に対して110Thatgloryn...失楽園110~124行目

  • 失楽園 84~109行目

    *昨年十一月から滞っていたParadiseLostの訳を再開いたします。毎日は厳しいかもしれませんが、少なくとも巻一は終わらせられるよう努力いたします。念のため、前回既に訳した84~91行目ももう一度お目にかけます。状況としては、神に弓引いて、同じく叛いた堕天使の群れとともに地獄の最下層に落とされたサタンが、業火に悶えるナンバー2のベルセブブを眼にして呼びかけている……というシーンです。「俺」=サタン。「汝」=ベルセブブ。「かの者」はGodです。楽園の喪失巻一ジョン・ミルトン84汝〔ナレ〕がもし彼奴〔キャツ〕であるならおおだが何という堕落か!何と85変わり果てたか幸ある光の王国にあってさえ86抜きんでた輝きを身に帯びて照り映え87光ある者どもの万〔ヨロズ〕に勝っていた様とはもし彼奴がともに心を合わせて88思いと...失楽園84~109行目

  • T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:最終段落

    T.S.ElliotReligionandLiteraturep.106T・S・エリオット「宗教と文学」106頁今のところ、これがある種の倫理性であって諸制限の内では偉大な善を為し得ることを否みはしない。しかし、思うに、我々は皆それよりも高い理想を提示しない倫理性は拒むべきである。それは勿論我々の目撃している、共同体はひとえに諸個人の利益のためにあるという見解に反する暴力的な反発を表している。しかし、それは同じほどこの世界の福音であって、この世界にはそれしかないのだ。現代の文学に対する私の不満も同じ類のものである。現代の文学が通常の意味で「非倫理的」だったり、あるいはいっそ「倫理に叶って」いたりして、どちらの場合でも責任が充分ではないと思いたがっているわけではない。単にそれ〔*訳注:現代文学〕が我々の最も基本的...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:最終段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第二十段落

    T.S.ElliotReligionandLiteraturep.106T・S・エリオット「宗教と文学」106頁今日、世界の極めて多くの人々がすべての害悪は根本的に経済上のものだと信じている。種々の特別な経済上の変化が世界を正すにも足ると信じる者もいれば、その上に多かれ少なかれ猛烈な社会上の変化を求める者もいる。主として相反する二つのタイプの変化である。求められたり時には執り行われたりするこれらの変化はある一つの面で似通っている。私の呼ぶところの世俗性という考え方を有しているのだ。彼らは時間的な、物質的な、現象的な性質の変化にのみ関心を向け、集団の倫理にのみ関心を向ける。この新たな信仰の掲示を私は次のような物言いに読む。「我々の倫理性において論理を問うただ一つの検めは、それが個人の国家に奉仕する力を何であれ妨げ...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第二十段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」第十九段落

    T.S.ElliotReligionandLiteraturepp.105-106T・S・エリオット「宗教と文学」105~106頁何を好むかを知ることは文学の読み手としての我々の務めである。何を好むべきかを知ることは、文学の読み手であるのと同様にキリスト教徒としての我々の務めである。何であれ我々の好むものこそが我々の好むべきものだと仮定しないことが誠実な人間としての我々の務めである。そして我々の現に好んでいるものが我々の好むべきものだと仮定しないことが誠実なキリスト教徒としての我々の務めである。最後のものは私が望むに二つの文学として存在するだろう。一つはキリスト教徒の消費のためであり、もう一つは異教徒の世界のためである。すべてのキリスト教徒に責務として課されていると私が信じるのは、世界の残りの部分によって適用さ...T・S・エリオット「宗教と文学」第十九段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第十八段落

    T.S.ElliotReligionandLiteraturep.105T・S・エリオット「宗教と文学」105頁私は文学に対するリベラルな態度は働かないだろうと示唆してきた。もし仮に「人生観」を我々に押し付けがちな書き手たちが本当に別個の諸個人であって、もし仮に読み手としての我々が別個の諸個人であったとしても、その結果は何になるのか?まずもって確かに各々の読み手は、その読書によって、己が前もって感銘を受けようと支度してきたものによってのみ感銘を受けるばかりだろう。彼は「最小抵抗線」に従うはずだ。それが彼をより良い者にするという保証はないだろう。文学的な判断のために、我々は直ちに二つのことに鋭く気付く必要がある。「我々は何を好むか」と「何を好むべきか」に。どちらか一方でも知っているほど誠実な人々は殆どいない。一つ...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第十八段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」第十六・十七段落

    *十六・十七段落は短いため二つまとめます。……二行目に出てくる「Miss.Mannin」が何者であるかは〔少なくとも広辞苑とウィキペディアでは〕確かめられませんでした。文脈からして「高尚な文学/バーナード・ショーとウルフ夫人」に対する「低俗な文学/ノエル・カワードとマン嬢」となるため、ヴァージニア・ウルフと同時代の大衆的に人気を博した女性の流行作家ではないかと推測されます。しかしエリオット氏は素敵に皮肉で厭味ったらしい。「俺以外は世の中馬鹿ばかりだ」と率直に言ってしまえよ。T.S.ElliotReligionandLiteraturepp.104-195T・S・エリオット「宗教と文学」104~105頁現代の文学はそれ自体の内に善し悪しの、より善いか悪いかの妥当な区別を完璧に有している。私は自分がバーナード・ショ...T・S・エリオット「宗教と文学」第十六・十七段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第十五段落

    ★思いがけず長い寄り道になりましたが、「宗教と文学」はあと六段落ばかりで終了いたします。そろそろ失楽園に手をつけねば……二行目の大文字の「ブレイクたち/Blakes」は、正直これでよいのか自信がありませんが、同じ行の「vision」からの連想でウィリアム・ブレイクではないかということにしておきました。ブレイクの作品についてはカテゴリ「W・ブレイク」でTigerとTheSickRoseを訳しております。以下は雑感になります。今回の第十五段落の後半の'thereneverwasatime'を三回繰り返すリフレインの部分には、理知的な散文作者のなかにふと詩人が顔を出してしまったような、おこがましいながら微笑ましさを感じました。そしてふと「バーント・ノートン」の冒頭を思い出しました。↓今在るときと過ぎたときとはおそらく...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第十五段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第十四段落

    T.S.ElliotReligionandLiteraturepp.103-104T・S・エリオット「宗教と文学」103~104頁この点について私はリベラルな気質からや、もしあらゆる者が考えたことを語り、好むことを行ったならば、物事はどういうわけか自動的な埋め合わせや調整によって正しい結末へと至ると信じている輩かららの言い返しを予期している。「誰にも試みさせよ」と彼らは語る。「もし誤りであったとしたら、我々は経験から学ぶだろう」と。この主張には幾何の価値があるかもしれない。もし我々がこの世で常に同じ世代であったり、そうでないことは承知のように、人々が恒に年長者の経験から多くを学んだりするのであれば。これらのリベラルな輩は抑制されない個人主義と呼ばれるものによってだけ恒に真実が現れると信じている。彼らの考えでは観...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第十四段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」 翻訳:第十三段落

    T.S.ElliotReligionandliteraturep.103T・S・エリオット「宗教と文学」103頁私の言わんとしてきたことの主題との関わりが今や多少は明らかになるだろう。たとえ我々が「娯楽」であろうと「審美的な享楽」のためであろうとただ歓びのためだけに文学を読むのだとしても、この読書は決して単に特別な意味の種類にだけ効果は及ぼさない。それは我々に全き人間としての効果を及ぼし、道徳的かつ宗教的な存在としての我々に効果を及ぼす。とある傑出した現代の書き手個人が向上し得る一方で、同時代の文学は全体とて堕落しつつあるということだ。そして我々のような時代にあってはそう悪くない書き手の影響さえも幾何の読み手を堕落させるだろう。書き手が人々のためにもたらすものは必ずしも彼が意図したものである必要はないのだから。...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第十三段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」 翻訳:第十二段落

    T.S.ElliotReligionandLiteraturep.103T・S・エリオット「宗教と文学」103頁段階的に育つにつれてより多くを読み、より多様な著者について読むようになって手に入るのは様々な人生観である。しかし、私は疑っているのだが、人々は一般に他者の人生観の経験は「進歩的な読書」によってのみ手に入れるものだと見做している。仮定するならば、それを我々がシェイクスピアやダンテやゲーテやエマーソンやカーライルや、その他数ダースの尊敬すべき書き手に専念した報酬としているのだ。愉しみのための他の読書は時間の無駄というわけである。しかし、私は次のような愕くべき結論に至りたい気分に駆られる。すなわち、「愉しみのため」か、「純粋の歓びのため」に読む文学こそがもっとも大きくかつ幾分疑わしい影響を及ぼすだろうと。最...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第十二段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」 翻訳:第十一段落

    T.S.ElliotReligionandLiteraturepp.102-103T・S・エリオット「宗教と文学」102~103頁韻文であれ散文であれ創作による作品が、すなわち想像上の人間の行動や思考や熱情を描いた作品が直接に我々の人生の知識へ拡がるというのは単純には真実ではない。直接の人生の知識とは直接に我々自身に関わるものであり、人々が一般にどのように振舞うのか、一般に何に似ているのかといった我々の知識であって、我々が自身を参加させる人生の一部分における限りで一般化のための材料を与えるものである。創作物を通じて獲得する人生の知恵は過剰な自意識の次の段階によってのみ可能となる。すなわち、それは他の人々の人生の知恵であり得るのみであり、人生そのものではありないのだ。我々が何らかの小説のなかで起こった出来事に、眼...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第十一段落

  • T・S・エリオット 「宗教と文学」第十段落

    T.S.ElliotReligionandLiteraturepp.101-102T・S・エリオット「宗教と文学」101~102頁我々の読むものは単に「文学的な味わい」と呼ばれる何かに関わるばかりではなく、多くの他の影響のなかのひとつに過ぎなかろうと、我々の存在の総体に直接の影響を与えるという事実は、思うに、我々の個人的な文学教育の来歴の意識的な吟味によってもっともよく引き出される。ある種の文学的な多感さと共にあった何びとかの青春期の読書を鑑みて欲しい。私は信じているのだが、仮初にも詩の魅惑を感ずる者は誰でも、彼あるいは彼女が若い頃にとある詩人の作品によって彼方へ運ばれた瞬間を思い出し得る筈だ。まずもっておそらく彼は種々の詩人たちに次から次へと魅了されただろう。このつかの間の心酔の理由は、単に我らの詩に対する多...T・S・エリオット「宗教と文学」第十段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」 翻訳:第九段落

    T.S.ElliotReligiousandLiteraturep.101T・S・エリオット「宗教と文学」101頁我々は、先入観や確信をわきによけて創作物は創作物として、劇は劇として眺めるために、文学に対して偏見を持たないことを期待されている。この国で不正確に「検閲」と呼ばれているもの――無責任な民主制における諸個人の意見を代表しているために公の検閲よりもさえ対抗するのが難しい――に、私は殆ど全く共感を抱かない。部分的には、それがきわめてしばしば間違った書物を抑圧するからであり、禁酒法よりさして効果的ではないからであり、国家による統制が相応の国内の影響力にとって代わりたいという切望のひとつの明示だからである。そして、総体としては、それがただ習慣や習癖によって働くものであって、確固たる神学的かつ倫理的な信条による...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第九段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」 翻訳:第八段落

    T.S.ElliotReligionandLiteraturepp.100-101T・S・エリオット「宗教と文学」100~101頁今、一般に人々は限定された意見を宗教的なものであれ非宗教的なものであれ抱き、小説や詩をその問題に即して精神の内の分離された仕切りにおいて読んでいるだろうか?宗教と創作物のあいだに共通する基盤は行動である。我々の宗教は後に続く人々に対する我々自身およびその行動への道徳観と判断と批評とを負わせる。我々が作者によって承認され、作者自身が調整するその結果への態度によって祝福を与えられた何某の行動を人がとるのを読むとき、我々は同じ方法による行動へ向かう影響を受け得る。同時代の小説家が孤立して彼自身の思考の内にあるとき、彼は受け取りえる者たちにたいして重要な何かを提供するだろう。しかし、小説家の...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第八段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」 翻訳:第七段落

    T.S.ElliotReligionandliteraturep.100T・S・エリオット「宗教と文学」100頁確信するに、我々はじつに完全に、そして未だに無分別に、文学を宗教的な判断から分離し損ねている。もし完全な分離があり得るならば、おそらくそれは問題にならないだろう。しかし、分離はなく、おそらく決して完全にはなされ得ない。もし我々が小説によって文学を例証するなら――というのも、小説は文学がもっとも多くの数に対して影響を与える形式であるからだが――少なくとも過去三百年の漸進的な文学の世俗化に気付くことになるだろう。バニヤンからデフォーあたりまでは倫理的な目的を持っていた。前者は懐疑を超越し、後者はおそらく疑いを抱いていた。しかし、デフォー以来、小説の世俗化は途絶えずに続いている。そこには三つの主な段階があっ...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第七段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」 翻訳:第六段落

    T.S.ElliotReligionandLiteraturepp.99-100T・S・エリオット「宗教と文学」99~100頁繰り返すに、宗教と文学について鑑みるとき、私はただ主に宗教と文学にのみ関心があるわけではないことを明白にするためだけに、これらについて語っている。関心があるのは、宗教とあらゆる文学とのあいだ関係が如何なるものであるべきかについてである。「宗教と文学」の第三のタイプはおそらくより手早く求められるだろう。すなわち、宗教の理念の促進を真摯に切望する者による文学作品である。それらは喧伝の項目のなかに見出されるかもしれない。私は勿論チェスタートン氏の『木曜日の男』や『ブラウン神父』のような喜ばしい創作物について考えている。私以上にこれらを認めて愉しむ者はない。ただこれだけは述べておきたいのは、同じ...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第六段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」 翻訳:第五段落

    T・S・ElliotReligiousandLiteraturep.99T・S・エリオット「宗教と文学」99頁しかし、その上に、私はある程度まではこれらの批評家は正しいと認める支度がある。なぜなら、私の言及した大部分の著者たちのようなある種の詩歌があるからだ。それは特別に宗教的な自覚の産物であり、我々が多数派の詩人に期待する一般的な自覚なしに存在するのだろう。幾人かの詩人たちにおいて、あるいはその幾つかの作品において、この一般的な自覚は存在しているだろう。しかし、それを表す準備の段階が押し隠され、ただ最終的な産物だけが現出されるのだ。これらと、宗教的なあるいは信心深い才能がそこに特別かつ限定された自覚を表明するあれらとを区別するのは極めて難しいだろう。私はヴォーンやサウスウェルやジョージ・ハーバートやホプキンス...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第五段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」 翻訳:第四段落

    T.S.ElliotReligionandLiteraturepp.98-99T・S・エリオット「宗教と文学」98~99頁第二の種類の宗教と文学の関係は「宗教的な」あるいは「信心深い」と呼ばれるものに見出される。今や詩歌の愛好者の――すなわち、誠実な直接の享受者および鑑賞者であって他者の承認の追随者ではない者の――この詩歌の分野へ向ける通常の態度とは何か?私の信じるに、すべては「分野」という呼び方が示しているだろう。彼は、常に明白ではないにせよ、あなたが詩歌を「宗教的な」と看做すとき、極めてはっきりした限定について述べていると信じているのだ。詩歌の愛好者の大多数にとって「宗教詩」は少数派の詩歌の一種に過ぎず、詩人とは主題となる問題の全体を宗教的な精神によって扱う詩人ではなく、この主題となる問題の限られた部分のみ...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第四段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」 翻訳/第三段落

    SelectedproseofT.S.EliotEd.ByFrankKermodepp.97~‘Religionandliterature’宗教と文学T・S・エリオット98頁私がここで関心を向けるのは、宗教文学についでではなく、我々の宗教の諸文学への適用についてである。しかし、初めに、我々が「宗教文学」と呼ぶものの三つの意味合いを区別しておくのがよいだろう。一つ目に我々がそれを「宗教文学」だと言うのは「歴史文学」や「科学文学」というのと同じやり方である。すなわち、聖書の権威ある翻訳やジェレミー・テイラー〔*訳注:英国国教会の牧師/1613-1667〕の作品を文学として扱えるというのは、二人の偉大な英国史家であるクラレンドンやギボンの史学的な書き物や、ブラッドリー〔*イギリスの哲学者/1846-1921〕の『論理...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳/第三段落

  • T・S・エリオット「宗教と文学」 翻訳:第二段落

    SelectedproseofT.S.EliotEd.ByFrankKermodepp.97~‘Religionandliterature’宗教と文学T・S・エリオット我々は、過去の数世紀ものあいだ、文学と神学の間には何のかかわりもないと見做してきた。これは――繰り返すようだが、つまり、とりわけ想像的な作品について――文学が過去にも今にもおそらくは常に何らかかの倫理的な基準によって判ぜられていることを打ち消すことではない。しかし、文学作品に対する倫理的な判断は、自らが従っていようがいまいが諸世代の受け入れる倫理的な規範によってのみ為される。堅苦しすぎるキリスト教神学を受け入れていたある年代において、共通の規範は相当にありふれていただろう。そうした期間では、共通の規範は「誉れ」や「栄え」や「復讐」といった諸概念を...T・S・エリオット「宗教と文学」翻訳:第二段落

  • T. S. エリオット「宗教と文学」〔翻訳 第一段落]

    『失楽園』が91行目にして行き詰ってしまったため、語学力の回復と向上のために、長年勝手に私淑しているT・S・エリオットの散文をしばらく訳してみます。まずはFrankKermode編集のSelectedproseofT.S.Eliotの97~106頁’Religionandliterature'を。タイトルはそのまま「宗教と文学」としました。SelectedproseofT.S.EliotEd.ByFrankKermodepp.97~‘Religionandliterature’宗教と文学T・S・」エリオット私の言うべきことは広く後続の支持を受けている。文学批評は一定の道徳的および神学的な基準によって補完されるだろう。今までのあらゆる年代における限り、道徳的および神学的な問題については共通の合意があって、その限り...T.S.エリオット「宗教と文学」〔翻訳第一段落]

  • 自作詩 夏に寄す

    夏に寄す遠い獣の暁に兆した死への戦きに駆り立てられるまま我ら憐れな叡智ある者らは月へと至ったさみしい藍色の夜空を追い立てられた銀色の兎が見上げている(私は帰りたいのだ故郷に帰りたいのだ)Homesweethome!懐かしい埴生の宿よ朽ちてゆく苑の芝生に白百合の育つ宿よ眠れ愛しい死者たちよ花咲く旧い苑にそして行かせておくれ夏毎に戻ってくるから(夏は我らの追悼の季節だ今もそしてこれからも)過ぎた昔の輝きが花火に転じて夏の終わりの藍色の夜空を彩り尽くす自作詩夏に寄す

  • リチャード・ウィルヴバー 汝妹よ 全訳再掲載

    汝妹彼女の美は何であったのか吾らの初めの住まいでアダムの望みだけがすべてでもっとも少ないものばかりがその王の賜物と産物として現れていたころ吾らにどうして思い描けよう?類似が分離を待たねばならぬそのような所で彼女は共に在った水と光と木々といずれにも似ては映らぬほどにも彼は目覚めて見つめ尽くした彼女の裸の顔をしかしそのとき彼女は変わって近づき下ってきたアベルの群れどもとカインの原野へと彼らの願いを纏って彼女の楽土は優美さを隠し穀物の塊の豊かな形を隠した彼女はこの世で毀れたあらゆる労苦とその果実の見せかけを受け入れたときに襞をとる薄物の衣を纏った円柱の姿で耐え忍ぶその掌〔テ〕に属性を注がせ最果ての塔に囚われた輝ける虜となってその誉れを戦いの野へと流して黄昏時に苑を歩むその影は弧を描く昏い扉と似て西へと向かうすべての船...リチャード・ウィルヴバー汝妹よ全訳再掲載

  • リチャード・ウィルバー 汝妹よ 第七~八連目

    SheRichardWilburTree,temple,valley,prow,gazelle,machine,Morenamedandnamelessthanthemorningstar,Lovelyineveryshape,inallanseen,Wedarenotwishtofindyouasyouare,Whoseapparition,bidingtimeuntilDesiredecayandbringthelatterage,ShallflourishintheruinsofourwillAnddeckthebrokenstoneslikesaxifrage.木や寺や舳〔ミヨシ〕やガゼルや機械などいや増しに名づけられ或いは朝の星よりも名を持たずにいずれの形でも心惹きつけすべては見えざるまま吾らは敢えて...リチャード・ウィルバー汝妹よ第七~八連目

  • リチャード・ウィルバー 汝妹よ 三~六連目

    SheRichardWilburButthenshechanged,andcomingdownamidTheflocksofAbelandthefieldsofCainClothedintheirwish,herEdengraceshid,Ashapeofplentywithamopofgrain,Shebrokeupontheworld,intimetookonThelookofeverylavouranditsfruits.Shecuppedherpatienthandforattributes,WasradiantcaptiveofthefarthesttowerAndshedherhonouronthefieldsofwar,Walkedinhergardenattheeveninghour,Hersh...リチャード・ウィルバー汝妹よ三~六連目

  • リチャード・ウィルバー 「汝妹よ」 一・二連目

    *91行目にしてParadiseLostにいよいよ行き詰ったため、現代アメリカ詩のアンソロジーで心惹かれたRichardWilburの不思議な詩を訳してみます。まずは八連構成の一・二連目を。原題は率直にSheですが「彼女」ではあまりに味気ないため、題名だけは擬古的に「汝妹〔ナニモ〕よ」といたしました。ContemporaryAmericanPoetryEd.ByDonaldHall1962pp.85-86SheRichardWilburWhatwasherbeautyinourfirstestateWhenAdam’swillwaswhole,andtheleastthingAppearedthegiftandcreatureofhiskinh,Howshouldweguess?Resemblancehadto...リチャード・ウィルバー「汝妹よ」一・二連目

  • 失楽園 84~91行目

    ParadiseLostBookIJohnMilton84Ifthoubeesthe;butOhhowfall’n!howchanged85Fromhim,whointhehappyrealmsoflight86Clothedwithtranscendentbrightnessdidstoutshine87Myriadsthoughbright:ifhewhommutualleague,88Unitedthoughtsandcounsels,equalhope89Andhazardinthegloriousenterprise,90Joinedwithmeonce,nowmiseryhathjoined91Inequalruin:intowhatpitthouseest84汝〔ナレ〕がもし彼奴〔キャツ〕であるな...失楽園84~91行目

  • 失楽園 75~83行目

    ParadiseLostBookIJohnMilton75Ohowunliketheplacefromwhencetheyfell!76Therethecompanionsofhisfall,o’erwhelmed77Withfloodsandwhirlwindsoftempestuousfire,78Hesoondiscerns,andwhelt’ringbyhisside79Onenexthimselfinpower,andnextincrim,80LongafterknowninPalestine,andnamed81Beelzebub.Towhomth’Arch-Enemy,82AndthenceinHeav’ncalledSatan,withboldwords83Breakingthehorridsi...失楽園75~83行目

  • 失楽園 70~74行目

    ParadiseLostBookIJohnMilton70SuchplaceEternalJusticehadprepared71Forthoserebellious,heretheirprisonordained72Inutterdarkness,andtheirportionset73AsfarremovedfromGodandlightofHeav’n74Asfromthecentrethricetoth’utmostpole.70非時〔トキジク〕の裁きが叛きのために71調えたかくなる場所で定められた獄舎は72全き闇の内にあり割り当ては73神と天なる光から隔たりきっていた74核から最果ての極が大いに隔たるほどにも*今回は5行だけです。ピリオドよ有難う。72行目darknessを63行目では「暗闇」としたた...失楽園70~74行目

  • 失楽園 59~69行目

    ParadiselostBookIJohnMilton59Atonceasfarasangel’skenheviews60Thedismalsituationwasteandwild,61Adungeonhorrible,onallsidesround62Asonegreatfurnaceflamed,yetfromthoseflames63Nolight,butratherdarknessvisible64Servedonlytodiscoversightsonwoe,65Regionofsorrow,dolefulshades,wherepeace66Andrestcanneverdwell,hopenevercomes67Thatcomeall;buttorturewithoutend68Stillurg...失楽園59~69行目

  • 失楽園 50~58行目

    ParadiselostBoolIJohnMilton50Ninetimesthespacethatmeasuredayandnight51Tomortalmen,hewithhishorridcrew52Layvanquished,rollinginthefierygulf53Confoundedthoughimmortal:buthisdoom54Reservedhimtomorewrath;fornowthethought55Bothoflosthappinessandlastingpain56Tormentshim;roundhethrowshisbalefuleyes57Thatwitnessedhugeafflictionanddismay58Mixedwithobdurateprideandste...失楽園50~58行目

  • 模倣される情動

    夜中に目が覚めてしまったため、先ほどの「国民祭典」に対する私見を追加いたします。ここ一年半ほどの間で体験した言葉では完全には表現しがたい体感から思うことですが、人間のあらゆる情動の根底にあるものは極めて動物的な死への恐怖と生への充足感なのではないかという気がします。両者はいわゆる「心」で感じるものではなく、体温の変化や筋肉の収縮、そして何より瞬間的な脈拍の増大といった明確な体感を伴っている。人間がまだ単なる動物であったとき、己に死をもたらす捕食者や敵対者を認識した瞬間、力に優れた個体は攻撃あるいは逃走のために体温を上昇させ、力に劣る個体は隠れ潜むために体温を低下させたのかもしれません。前者が怒りの根底にあり、後者が恐怖の根底にある。言い換えれば、対象の大小にかかわりなく、すべての怒りは本質的に敵対者に対する殺意...模倣される情動

  • 今は一体いつなのか?

    失楽園の翻訳は覚悟の上ながら難航しております。そちらとは別に、今しがたTV中継で眼にした天皇即位を祝う国民祭典の映像について私見を記します。皇居前に集った観衆による君が代の合唱につづいて、行進曲を背にして「天皇陛下万歳」と叫びながら旭日旗を振る人の集団を眼にして、私は自分が典型的な戦前の大日本帝国の映像のパロディでも見ているような悍ましさを感じました。心底からの熱狂ではなく、「いかにもそれっぽい」浅薄なシュミュラークル。個人的に、私は現皇后陛下の美しさや学識に憬れを抱いていますし、現に存続している皇室そのものを今すぐ廃止するべきだとは思っていません。しかし、それは、七十余年前に本来であれば終結するはずだった旧い社会の伝統が御しがたい偶然によって残ってしまった結果の、美しくはあってもいずれ消えてゆくべき過去の幻影...今は一体いつなのか?

  • 失楽園 41~49行目

    ParadiseLostBookIJohnMilton41Ifheopposed;andwithambitiousaim42AgainstthethroneandmonarchyofGod43RaisedimpiouswarinHeav’nandbattleproud44Withvainattempt.HimtheAlmightyPower45Hurledheadlongflamingfromth’etherealsky46Withhideousruinandcombustiondown47Tobottomlessperdition,theretodwell48Inadamantinechainsandpenalfire,49Whodurstdefyth’Omnipotenttoarms.41手向かいさえしたな...失楽園41~49行目

  • 失楽園 34~41行目

    ParadiseLostBookIJohnMilton34TheinfernalSerpent;heitwas,whoseguile35Stirredupwithenvyandrevenge,deceived36Themotherofmankind,whattimehispride,37HadcasthimoutfromHeav’n,withallhishost38Ofrebelangels,bywhoseaidaspiring39Tosethimselfingloryabovehispeers,40HetrustedtohaveequalledtheMostHigh,41Ifheopposed;andwithambitiousaim34かの地獄の蛇こそが嫉み心と35報復に駆り立てられた企てで人の子の36母を欺...失楽園34~41行目

  • 失楽園 27~33行目

    ParadiseLostBookIJohnMilton27Sayfirst,forHeav’nhidesnothingfromthyview28NorthedeeptractofHell,sayfirstwhatcause29Movedourgrandparentsinthathappystate,30FavouredofHeav’nsohighly,tofalloff31FromtheirCreatorandtransgresshiswill32Foronerestraint,lordsoftheworldbesides?33Whofirstseducedthemtothatfoulrevolt?27まず告〔ノ〕れよ天は何をも汝〔ナ〕が眼から隠していないのだから28地獄の深き域さえまず告れよいかなる故によって...失楽園27~33行目

  • 失楽園 17~26行目

    Pradiselost:BookI17AndchieflythouOSpirit,thatdostprefer18Beforealltemplesth’uprightheartandpure,19Instructme,forthouknow’st;thoufromthefirst20Wastpresent,andwithmightywingsoutsoread21Dove-likesat’stbroodingonthevastabyss22Andmad’stinpregnant:whatinmeisdark23Illumine,whatislowraiseandsupport;242Thattotheheighthofthisgreatargument25ImayassertEternalProvidence,...失楽園17~26行目

  • 失楽園 6~15行目

    ParadiseLostBookIll.6-156SingHeav’nlyMuse,thatonthesecrettop7OfOreb,ofofSinai,diddstinspire8Thatshepherd,whofirsttaughtthechosenseed,9Inthebeginninghowtheheav’nsandearth10RoseourChaos;orifSionhill11Delighttheemore,andSiloa’sbrookthatflowed12FastbytheoracleofGod;Ithence13Invokethyaidtomyadvent’roussong,14Thatwithnomiddleflightintendstosoar15Aboveth’Anianmount...失楽園6~15行目

  • 失楽園

    再開がてらの景気づけにロバート・フロストを保留してParadiseLostに挑みます。……何度挑んでも常に44行目あたりで挫折したのですが……今回はせめて行数三桁まで行きたい。私事ながら、そしてなぜかは説明しがたいながら、私はこの頃人生をもっと前向きに生きよう!という気分に溢れております。吾がBraveNewworldのモットーはmementomoriandCarpeDiem。死を思え、そして今を掴め。が、具体的にどう掴んでいいのやら考えあぐねているため、とりあえず無謀な挑戦に走ります。長文を失礼。夜中のハイテンションです。ParadiseLostBookIOfman'sfirstdisobedience,andthefruitOfthatforbiddentree,whosemortaltasteBrough...失楽園

  • 林檎つみのあとに 9~10行目

    AfterApple-PickingRobertFrostIcanntrubthestrangenessfrommysightIgotfromlookingthroughapaneofglassIskimmedthismorningfromthedrinkingtroughAndheldagainsttheworldofhoarygrass.林檎つみのあとにロバート・フロストまみからぬぐいされぬのは透かしまみえたいぶかしさうすらごおりを今朝がたに水の桶からすくいあげ褪せる草葉のうつし世にむかいかかげるときにみた※一月ぶりに訳を再開いたしました。年末年始はどうにもあわただしい。……というのは半ば言い訳です。単に難しすぎまして、おそらく以後も相当に停滞すると思います。言わんとしていることは、なんとなく分かるような気...林檎つみのあとに9~10行目

  • 林檎つみのあとに 7~8行目

    AfterApple-PickingRobertFrostEssenceofwintersleepisonthenight,Thescentofapples:Iamdrowsingoff.林檎つみのあとにロバート・フロスト冬の眠りを凝らせて夜にやどった林檎の香おれはまどろみかけている※8行目の訳は、じつはまだ迷っています。日本語での一人称はできるかぎり用いたくないのです…林檎つみのあとに7~8行目

  • 林檎つみのあとに 1~5行目

    AfterApple-PickingRobertFrostMylongtow-pointedladder’sstickingthroughatreeTowardheavenstill,Andthere'sabarrelthatIdidin'tfillBesideit,andtheremaybetoworthreeApplesIdidin'tpickuponsomebought.ButIamdonewithapple-pickingnow.林檎つみのあとにロバート・フロストながほそいふたつのとがった梯子の先は樹を貫き天を向いたままかたえの樽はみちきらずふたつみっつの摘まぬ実が枝にのこっていようけどこれで摘むのはおしまいだ※またロバート・フロストを試みてみます。私には珍しくアメリカの詩人…と、思いかけましたが、よく...林檎つみのあとに1~5行目

  • 砂州をこえて〔全文:再編集)

    砂州をこえてアルフレッド・テニスン日がおち夕の星がでて冴えたひとつの声がよぶ砂州にうめきのないことを海へ漕ぎだすそのときはけれども潮〔シオ〕はねむたげになりあわだつにはあまりにもみちたりすぎているといい果てぬ淵からきたものがもとへともどるそのときはたそがれ夕の鐘がなりあとには闇があるばかり去るに嘆きのないことをついに旅立つそのときは有為〔ウイ〕のさかいの彼方〔アナタ〕からあふれる水にながされてはるかにさかりゆくにせよねがわくばみちびくかたとあいみたい砂州をこえきるそのときはCrossingtheBarAlfredTennysonSunsetandeveningstar,Andoneclearcallforme!Andmaytherebenomoaningofthebar,WhenIputouttosea.But...砂州をこえて〔全文:再編集)

  • 砂州をこえて 最終連

    CrossingtheBarAlfredTennysonFortho'fromoutourbourneofTimeandplaceThefloodmaybearmefar,IhopetoseemyPilotfacetofaceWhenIhavecrostthebar.砂州をこえてアルフレッド・テニスン有為のさかいの彼方からあふれる水にながされてはるかにさかりゆくにせよねがわくばみちびくかたとあいみたい砂州をこえきるそのときは※ようやく最終連に至りました。1行目「有為」は「ウイ」とお読みください。ちなみに意味は↓有為〔仏〕さまざまの因縁によって生じた現象、またその存在。絶えず消滅して無常なことを特色とする(『広辞苑』)…だそうです。TimeandPlaceの訳として強引にひねりだしました。そして、同じく1行目「彼...砂州をこえて最終連

  • 砂州をこえて 三連目

    CrossingthebarAlfredTennysonTwilightandeveningbell,Andafterthatthedark!Andmaytherebenosadnessoffarewell,WhenIembark;砂州をこえてアルフレッド・テニスンたそがれ夕の鐘がなりあとには闇があるばかり去るに嘆きのないことをついに旅立つそのときは砂州をこえて三連目

  • 砂州をこえて 二連目

    CrossingthebarAlfredTennysonButsuchatideasmovingseemsasleep,Toofullforsoundandfoam,WhenthatwhichdrewfromouttheboundlessdeepTurnagainhome.砂州をこえてアルフレッド・テニスンけれども潮はねむたげになりあわだつにはあまりにもみちたりすぎているといい果てぬ淵からきたものがもとへともどるそのときは砂州をこえて二連目

  • この世の花 全文〔再編集〕

    この世の花W・B・イェイツだれがゆめみたことだらう美が夢と似てすぎるなどかの女らの赤いくちびるは悼みにみちた誇りで悼むもはやあらたなおののきはおこりはしないだらうとトロイはすぎてしまつたひとつの気高いとむらいの燦めきのうちにウシュナッハの子らは死んだわれらと労する世はすぎる人どものたましいのさなかで揺らめき移りかわる冬の瀬のあをざめた水のやうに過ぎゆく星ぼしのもとの天のうみのもとのこのさびしいおもての生のやうにみつかいどもようなだれろなれらのおぼろな住処で汝らやあるいはあらゆる打つべき胸が疲れはて心やさしいひとつの御座により永らえるまへにかのきみはこの世を草生す道となされたかのひとのさまよへる足どりに先んじTheRoseoftheWorldW.B.YeatsWhodreamedthatbeautypassesl...この世の花全文〔再編集〕

  • 砂州をこえて 一連目

    CrossingtheBarAlfredTennysonSunsetandeveningstar,Andoneclearcallforme!Andmaytherebenomoaningofthebar,WhenIputouttosea.砂州をこえてアルフレッド・テニスン日がおち夕の星がでて冴えたひとつの声がよぶ砂州にうめきのないことを海へ漕ぎだすそのときは※またも有名どころの短い海関係をひとつ。このごろどうも心が海づいております。あなあわれかもめどりよ。この詩はいっそ三十一文字×4連でいきたいところですが、さすがに少々難しいため、できるだけ七五×4を目指そうと思います。砂州をこえて一連目

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