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あいしてます https://blog.goo.ne.jp/underthesameskywithjk/

物語を書いてみました。家族、友達、恋人、大切な何かを見つめなおしたくて。忘れ物はないですか?

皆さんの感想が聞けたらとても嬉しいです。 こうなって欲しいという、ストーリーの予想なども。

anko
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2009/12/09

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  • 3.ハイタッチ

    校長先生の話は長い。それももう今日で終わりかと思うと大きな心で聞いていられる。でも、頭の中では正に走馬灯のように、この三年間の彼がぐるぐる回る。初めてレギュラーになった日の試合でヒットを打った時の彼の笑顔は満点だった。それまで朝練の前にひたすら素振りをする、彼の汗を知っていたから、裕未には本当に眩しい笑顔だったのだ。初めてハイタッチで彼の手に触れた試合後、手を洗えなかった。その話を奈々子にしたら、無理やり握手されて台無しになった。だけど後で、裕未の左手に小さくマートマークを書いてくれて「裕未の愛だね。」と言ってくれたのが、なんだか凄く嬉しくて、授業中も左手を眺めていたっけ。3.ハイタッチ

  • 2.入場

    「裕未・・・」そう言って裕未にガッツポーズをしてみせる奈々子は、すでに涙で真っ赤な目をしていた。今日は裕未たちの卒業式で、今まさにクラスごとに入場が始まる所だ。奈々子だけは裕未の決心を知っていたのだ。今日、彼に告白することを…。体育館に入ると、見慣れたはずの空間が不思議な空気をかもし出して、吹奏楽の演奏がまた特別な盛り上がりをみせる。席について後ろをチラリと見たら、保護者席にはカメラの集団がこっちを見ていた。裕未から右前方斜め15度ぐらいに彼の背中が見える。制服の色あせたグレーが時々動くたびにドキドキする。「こっち見ないかなぁ・・・」そう思ったら振り向いたからビックリした。慌てて左の通路の方を見たら、キライな英語の剥げ頭の先生と目が会ってしまった。最悪だ。2.入場

  • 1.彼が好き

    彼が大好き。それは裕未の全ての原動力になっていた。この高校に入学してすぐに彼が野球部だと知って野球部のマネージャーになり、数学が得意な彼に追いつきたくて公式を沢山暗記した。青が好きな彼の手袋を青い毛糸で編んで、そのまま箪笥の奥のほうにしまったまんまだ。牛肉じゃなくチキンカレーが好きな彼のために、夏の合宿のメニューはチキンカレーが多かった。そんな事を彼は全く気が付いていないだろう。彼と同じ大学に行きたくて、必死で予備校にも通ったのに裕未だけ受かった。間抜けすぎて笑える。でも、裕未は彼が大好きだった。1.彼が好き

  • 11.桜

    「泣いても大丈夫や。今日は卒業式やからな。」徹は言った。「うん…。」友子はハンカチを握り締めて言った。「徹、バイバイ」それは徹の耳元に囁きのように聞こえた。徹は黙って歩いた。さっき来た川べりの方を見たら、1本だけ満開に咲いている桜の花が見えた。仄かにピンク色のその花びらは、時々吹く風に小さく震えるように揺れながら、枝の端々まで満開に花を咲かせている。友子は徹の背中で見たこの桜を一生忘れない、と思った。学校には少し遅れて着いたけど、怪我をした友子を友達が保健室に連れて行ってくれた。体育館からは吹奏楽の音楽が聞こえていた。卒業式が始まる。***********Fin************11.桜

  • 10.紺色のハンカチ

    「お前、重いなー」徹は友子が以外に軽いのでそんな事を言ったのだ。友子の香りがした。自分の肩の上から両腕が回ってて、こんなに近くに友子がいることにドキドキしていたけど、それよりも友子の香りが仄かに自分を包み込むようで心地よかった。「筋肉質やから重いねん。これでも痩せてんで。」友子は徹の背中の大きさに自分を任せて、軽々と歩く徹が頼もしかった。もし、今日徹が東京に行かなかったら…。この背中にずっとついて行けたかもしれない。回した手にぎゅっと力が入った。知らない間に涙が出てきた。友子はシクシクと泣き出した。徹は友子が痛くて泣いていると思った。黙って、ポケットから紺色のハンカチを友子に渡してやった。10.紺色のハンカチ

  • 8.泥だらけ

    その時、何に躓いたのか分らなかった。友子は不意に力が抜けたように地面に叩きつけられた。「痛っ!!」朝露に濡れた草がクッションにはなったものの、新しい白い靴下は泥に汚れて、慌ててついた手も肘も泥だらけだ。徹は慌てて来て「何してんねん、大丈夫か?」友子を起こそうとしたが、「痛っ、アカン、ぐねったみたいや・・・」見ると少し腫れているようだったので、徹は家に戻った方がいいと言ったのだが「いやや、もうこのまま行くわ。」というので、「ほんだら、負ぶったるわ。ほら。」徹は背中を向けた。学ランのせいか、徹の背中が思いのほか大きくて、何だか急に恥ずかしくなった。8.泥だらけ

  • 7.菜の花

    向こう岸の菜の花が黄色い土手の壁を覆っている。友子は一瞬眩しそうに目を細めた。この景色は見慣れてるハズなのに、今日は眩しく見える。『お、友子が見えてきたぞ』前方に小さく徹が見えた。『私も、向こうの方にカッコイイ男の子が見えてきた^^』徹は小さく揺れるスカートの友子を忘れないように、目に焼き付けておこうと思った。きっと、こんな瞬間をいつか懐かしく思い出すはずだ。こんな、日常の一瞬のような風景を・・・。先に橋のところに着いた徹はもう一度校章を確かめた。『徹はここから見ても逞しいね~』『はよ、来いよっ』楽しそうにスキップするように走りながら友子はやって来る。自分に向かってやってくる友子と、今日自分は笑ってさよならできるのだろうか・・・そんな事を考えていた。7.菜の花

  • 6.錦鯉

    『なぁ、桜の花咲いてきてるなー。』『ほんまやな。入学式まで待ってくれへんねんな^_^;』『川の中に鯉が泳いでんの知ってる?錦鯉やで。』『今、跳ねたの見えたぞっ』友子は鯉の赤や黄色や黒の模様が水面にうつろに揺れるのを見た。何年か前から川を美しくする為に放流している鯉だが、生き物の姿はそれだけで何だか心安らぐのが不思議だ。『なーんか、ゆらゆら泳いでんのいいな。』『お前は陸上やから、しっかり走れ』『徹は打ちまくれ』『おー、見ててくれ。いつかテレビに出れる選手になってやるからな。惚れるなよっ』『もう、惚れてるわ』徹は一人で真っ赤になっていた。6.錦鯉

  • 5.赤いポスト

    『オレ、この冬ずっと楽しかったわ』徹は友子が夏休みにグランドで、後輩を指導しながら走る姿に一目惚れし告白したのだ。ギラギラと照りつける太陽の向こうに更に輝いて見えた。テニス部の徹は小学校からテニススクールに通う、同い年の中では有力選手で、全国大会にも出ている。テニスしか知らないといっていい。そんな徹にとって友子は始めてのガールフレンドだった。『真っ黒な徹の顔があの夜見えにくくて、目だけがチラっと光ってて…。むっちゃ照れて言った一言が「付き合ってくれ」やったな(^。^)にひひ。あれが始まりやったな☆』『照れてないでっ。男らしく一言でゆうたんや。』『わかったわかった私も楽しかったよ。』赤いポストの脇を通り過ぎた。もう半分以上来たようだ。5.赤いポスト

  • 4.水色の空

    徹は空を見た。飛行機雲もないプールの水の中のような水色の空だ。『お前に貰った水色のクマのストラップ、外してん。大事になおしてあるからな。』もう、水色というよりはグレーに近くなってしまったクマを、徹は引越しの荷物のお気に入りのセーターの間にそっと隠してしまっておいた。これ以上汚れないように、というより自分の中で一つ一つを整理したかったからだ。『どうせ、恥ずかしいからやろ?ストラップない携帯って寂しくない』『アホやな。男は携帯にジャラジャラ付けへんもんや』『なんか、知らん人の携帯になるみたいで寂しーカッコイイの付けや』徹は友子に寂しいと言われたくてワザとその話をしたのかもしれない。誰かに自分の居場所を確約されている幸せを確認したかったのだ。4.水色の空

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