ケジメ8
女と男の見栄も外聞も役立たず、自然にこぼれた言葉に返るのは平熱。ユールは淡々と遠い日の話をする。「俺は初めてシオにあった時のことを今でもよく思い出す」初めてこの村を紹介されて、行商に訪れたのはちょうど今頃の季節。まずは下の村での商いを許されて、細々とした日用品を広げていた。村の男たちが賑やかしに集まる中、女の姿もちらほらと散見されるものの売上は芳しくなく。まあ初めての商いならこんなものか、と午後の昼下がりに手持ち無沙汰になって売上の計上を確認がてら帳簿をつけていて金額が合わないことに気がついた。やや多い。10名にも満たない客足だったが、一時、やりとりが集中したことがあった。あの時に誰かに釣り銭を渡し損ねている。そう気がついたユールは思い当たる客数名を探して村を歩き回った。確認の最後の一人は上の村の女性。な...ケジメ8
2022/10/09 22:39