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  • オヤジのあくび367

    安部公房「笑う月」を読む2 S・カルマ氏に描かれるマネキンや駱駝に対する偏愛は、どこからくるのか? 本書「シャボン玉の皮」では、ゴミに対する執着心が大きなスケールで記されている。 「廃物」は「有用性」に屈服したりすることは不可能だろう。・・・ゴミに挑戦しようなどという思い上がりが、ゴミの再武装をいっそう強化させたのだ。・・・まだ自分がゴミそのものではないという自覚(もしくは幻想)が、かろうじて日常を支えてくれているシャボン玉の皮なのだ。 SDG sとか、まだ何とかなるはずさと夢や希望を振りまいている人々に、とっくの昔から安部公房は警鐘を鳴らしていたのかもしれない。 そして、お墓などと数百年程度…

  • オヤジのあくび366

    安部公房「笑う月」を読む1 夢の話である。タイトルの笑う月とか、かさぶただらけの化け物とか、悪夢に苛まれた体験が語られる。ボクも子どもの頃怖い夢をよく見た。柱時計の前に骸骨が立っていて、時計の針の進み方変になってしまう夢とか、黒い球体状のものにボクがとても怯えている夢とか。最近でもお決まりの高い崖から落ちる夢はよく見る。これは落ちた瞬間に目が覚めるパターンなのだが、ふくらはぎがつりそうな位痛い時がある。 安部公房は、夢へのこだわりが強い人で、起き抜けにすぐ夢の内容を録音できるように枕元にテープレコーダーを置いておき、吹き込んでいた話が本書に出てくる。実際彼の創作の非現実性は夢の世界と紙一重な気…

  • オヤジのあくび365

    名作を読む91 モリエール短編集を読む タルチュフ 振り込め詐欺、オレオレ詐欺、給付金詐欺、詐欺のニュースを耳にしない日はないくらい世の中は詐欺事件で溢れ返っているし、実際撲滅できない。 タルチュフは、司祭に扮した詐欺師で、人の信仰心を弄び、財産を奪い家族関係をめちゃくちゃにしようとする。あわや一文なしの刑務所行きというところまで追い詰められたところで、国王の配慮で助かるという話。これだけ司祭がコケにされれば、教会関係者が怒るのも無理はなく、実際モリエールは酷い目にあっているらしい。 町人貴族 残念ながらというべきか、幸いなことにというべきか、私は貴族でないし身の回りにもそのような方はいらっし…

  • オヤジのあくび364

    名作を読む90 A・フランス作「少年少女」を読む ありふれたと言えば、たしかにどこにでもあるような子どもたちの様子を描いた作品です。 「学校」という話にローズ・ブノアという子が出てくる。算数は苦手みたいだが、動物を愛し、彼らの言葉がわかるつもりでいる。こういう大人になることでほとんどの人が失ってしまうファンタジーは、子どもの特権だと思う。最後のギャベルの母と子の会話がいい。「いい点数は、なんの役に立つの、おかあさん?」「いいお点をとったからって、すぐに役に立つというようなものではありませんよ。・・・大きくなれば、いちばん尊いご褒美は、ただ名誉だけで、別に得にはならないだってことがわかるでしょう…

  • オヤジのあくび363

    名作を読む89 オー=ヘンリー短編集を読む 起承転結のうち、キモは「転」。4コマ漫画だって3コマ目からが勝負だ。結まで引っ張らないで、転のまま終わるのもあり。うんと若い頃にシナリオセンターで教わった記憶が蘇ってきた。 この短編集にはご存知のクリスマスプレゼントを巡るすれ違い物語の「賢者の贈り物」や「最後の一葉」などがあるのだけど、個人的には「改心以上」が好きだ。 銀行強盗の前科がある主人公が、堅気の靴屋を始めて美しい婚約者を得て、幸せの絶頂期の中、金庫に閉じ込められてしまった女の子を救うために金庫破りの術を使うのである。しかもそこには彼に目をつけている名探偵が来ている。人は誰しも少なからず過去…

  • オヤジのあくび362

    名作を読む88 モンゴメリー作「赤毛のアン」を読む 今回は「赤毛のアン」。言わずと知れた不朽の名作ですね。この感情の振幅が大きく、想像の世界に没入しがちなアンに読者は共感し、アンといっしょに泣いたり怒ったりするわけです。 だいたいこの話には、失敗談が多い。アンは作者モンゴメリーの分身だから、作者自身にも似たり寄ったりの体験があるのだろう。例えばこんなエピソードが出てくる。親友のおばさんが旅疲れで深夜寝込んでいるベッドに女の子二人で飛び込んでしまう。リンド夫人は諭す。「あんたがあんまり不注意で、すぐなんでもするからなんだよ。」「でもそれがまたいちばんいいところなのよ。なんかわくわくすることが胸に…

  • オヤジのあくび361

    名作を読む87 ドッジ作「銀のスケートぐつ」を読む 父親が事故で記憶と体の自由を失ってしまった家庭の話。やがてあるお医者様との出会いを通して、父親は手術を経て快方へ向かう。タイトルである銀のスケートが商品となったスケート大会を絡めながら、話はハッピーエンドに向けて滑走する。 作者はアメリカ人ですが、物語の舞台はオランダです。オランダは日本とは鎖国当時と交易を続けていた国として、歴史の授業に登場するわけですが、本国の事情は当時はネーデルランド共和国連邦が成立したばかりだったのですね。けれどもその頃の経済発展はめざましく、個人的には商人の国というイメージがあります。 話をストーリーに戻すと、主人公…

  • オヤジのあくび360

    名作を読む86 J・C・ハリス作「リーマスおじさん」を読む。 グリム兄弟や松谷みよ子が民話を集めていたように、J・C・ハリスはアメリカ南部の黒人の間に伝わる話を集めていました。語り手は、そうリーマスおじさんです。 登場する動物は、うさぎ、うさぎに騙されてばっかりのキツネ、雌牛や亀も出てきます。この中に「うさぎとかめ」をアレンジした話が出てきます。うさぎが昼寝してしまうのではなく、亀が森の中の道を歩いて行き、見分けがつかない家族がリレーして勝ってしまうという話です。どう考えてもまともに走ったら、うさぎの方が速いので作者は亀に味方するのですね。勝ち組の鼻っ柱をへし折るような話が残っていくのですね。

  • オヤジのあくび359

    名作を読む85 マーク・トゥエイン作「はねがえる」を読む いたずらって、憎めない時がある。マーク・トゥエインの作品は、いたずら坊主のトム・ソーヤーと言い、王子とこじきの取り替え物語と言い、いたずらがいっぱいだ。この話もいたずらや賭け事に関するネタが満載! 友だちに担がれているのを承知で、エンジェル鉱山まで出かけて行った物好きな男。実はマーク・トゥエイン自身も鉱山の近くで働いた時期があったようで、その頃の体験が反映しているのかもしれません。 話は入れ子になっていて、酒場で飲んべえのウィーラーさんが語る思い出話の中に、本当の主人公のスマイリーが登場する。スマイリーは何でも賭け事のネタにしてしまう男…

  • オヤジのあくび358

    「お行儀」は、もはや死語なのだろうか? マナーは行儀と意味が重なるけれど、カタカナ語では伝えられない日本的な立ち居振る舞いが、きっとあったはず。お行儀という言葉は、行儀よくしなさい! とか、行儀が悪いわよ! などと子どもたちが叱られる場面でさんざん使われてきたので、ボクも含めて叱られてきた側のイメージはよくない。なんとなく学校行事で指導されている態度にも通じる気がする。儀式の儀は行儀の儀ですね。 けれど行儀を忌避してきた結果が、現在見かける眉を顰めたくなるような行動態度に通じているとしたら、もう一度行儀作法をやかましく指導することで一体何を育てようとしていたのか? を振り返ってみる必要があると…

  • オヤジのあくび357

    名作を読む84 エドガー・アラン・ポー作「盗まれた手紙」を読む 「ボクのこと、褒めてよ! お願い褒めて!」とせがむ子を煙たがる大人は多いだろう。警視総監が持て余している難事件に立ち向かうデュパンと大臣の知恵比べには、背景にそんな心理が動いている気がする。 同じ視点、同じレベルでは乗り越えられない。たしかにそうだ。でもそれを超えたからと言って、上から目線になったり、ちょっとした知識をひけらかすことはダメだろう。 最近のクイズ番組で特にその傾向を感じる。ボク自身は小さい頃からクイズ番組が好きで、一度だけタイムショックにチャレンジしたことがある。一次予選は通過して、東陽町の二次予選会場へ。ロザンの宇…

  • オヤジのあくび356

    名作を読む83 エドガー・アラン・ポー作「こがね虫」を読む 名探偵コナンくんの苗字は、江戸川。もちろん江戸川乱歩、もっと辿れば本編の作者エドガーからいただいている。 推理小説のおもしろさは、謎解きをたどることでしょう。海賊キッドの秘宝のありかを突き止めたレグランドの推理が、話の最後に種明かし的に語られる。ヒントはキッドが羊皮紙に記した暗号だ。 作者の立場に立って、謎の設定順を読者側から推理してみよう。大きなゆりの木、埋めた場所への距離角度などの数値は暗号に書き込むことにして、あとは暗号の解き方、これらは逆算していけば解けることにしたのはいいが、解き方を読者が見抜いてしまっては元も子もないので、…

  • オヤジのあくび355

    名作を読む82-2 デフォー作「ロビンソン=クルーソー」を読む2 流石に二十何年も一人きりでは哀れと思ったのか、作者はフライデーという友人を物語に登場させる。そこから先は、話は外界との交流が描かれ始め、お決まりのハラハラドキドキの展開。ロビンソン自身も本国イギリスに戻り、めでたしめでたし。 しかし、ロビンソンはもう結構な年齢なのに、また航海に出てしまう。懲りない人とは、こういう人のことだろう。じっとしていられず、常に何か新鮮な刺激を求めてしまうのだ。大袈裟に言えば、そういう人が人類の歴史に新しい地平を切り拓いてきたのかもしれない。 最後に、ロビンソンの近くにいたペットのうち、オウムだけが帰国ま…

  • オヤジのあくび354

    名作を読む82 デフォー作「ロビンソン=クルーソー」を読む1 古今の名作の中でも、かなり特異なストーリーであります。無人島に辿り着いてからのロビンソンは一人きりで、あとは犬が一匹。物語というのは登場人物がドヤドヤ出てきてナンボの世界なのに、いないわけです。 一人きりで、しかも無人島で生きていく。そのことがいかに困難なことであるか? 容易に想像がつく。時代は作者デフォーの生きていた18世紀よりさらに進み、21世紀前半に生きる私たちは、孤独の中で生き抜いていく技能や精神力をさらに失っているだろう。 だから、学校では体験宿泊学習と称して、子どもたちに、自分たちで薪を割り、飯盒でご飯を炊く体験をしてい…

  • オヤジのあくび353

    名作を読む81 フィールディング作「トム=ジョーンズ物語」を読む 物語の筋とまるで関係がないのだけど、横浜市には三日里親という制度がある。いろいろな事情で家族と離れて施設で暮らしている子どもに家庭的な雰囲気を体験してもらおうという趣旨で、もう二十年ぐらい前になるかなぁ、応募して一人の子と関わった経験がある。分を弁えなかったことを反省していますが、今は何をしているかなぁ。 さて、主人公のトムも本当の親には育てられていない。 美しい嫁、美男子の婿、財産、屋敷、地位などの価値と有り難さが、ある時代までの物語にとって必須アイテムであったし、それを読んだ大勢の読者にも自動的に刷り込まれてしまった。この話…

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