霜月や暮しの端に立つ煙廃寺に残る石仏お霜月指ピストルを去りゆく背に枯葉舞ふ霜月
炉辺咄とんと戸叩く地蔵かな蒼天に黄金はら散る銀杏かな里護る宮の走り根神の留守炉辺咄、神の留守
鯉揺れて微脈たちけり小春池二杯目は遠慮がちなる蕎麦湯かな故郷の駅の立ち食い蕎麦湯かな草もみぢ照る日雨の日重ね来て小春池
片時雨泣いて笑つて羅漢かなご機嫌が顔に出ている小春かな永らへば光も射さむ枯はちす片時雨・小春
神の留守を守り杜の水絶えず照りながら時に身任す落葉かな神の留守
火の入らぬ旧家のおくど冬浅し暮しの端を統べて皇帝ダリアかな冬浅し
通天閣を仰ぎ見る街河豚の店食ひだおれてみたき道頓堀河豚料理湯豆腐の出てオフ会の始まりぬ河豚
来し方の縄跳び大波小波かな実山査子わらべの駆けてくるやうな縄跳び
帰り花七十三歳となりにけり（ななそみさい）B面の暮らしに飽きて返り花逞しき戦後昭和や返り花帰り花
陽の恵み戻して甘き干大根えいの貌笑むに似たりて冬温しうらうらと眠気誘ふ小春かな小春日
鯉のたり池の木の葉を揺らしけり散り侘びて次の風待つ木の葉かな清掃婦の“おはよう”清し木の葉道木の葉
卑下もせず驕りもせずに冬薔薇競ふ気の亀には無きか日向ぼこ籾殻を焼く香のほのと田吹く風冬うらら
立冬の根性入らぬ二度寝かな明日の良き日の予感かな冬に入る立冬や箒目清き寺の庭立冬
切り替えのきかぬ余生や冬隣現役の秋の名残り香古鞄晩菊や晩成ならず七十坂秋惜しむ
切り替えのきかぬ余生や冬隣秋惜しむ
石の下に眠る権勢暮の秋二面石や人の心と秋の空故郷の人の情けや雪迎へ秋送る（その1）
虫の声仮の世の夜の逢瀬かな誰だって自慢の一つ虫の意地冬仕度小さき命の争ひて残る虫
それなりに暮しさうらふ吊し柿吊し柿暮らしの端を灯しをり教え子の古き手紙や文化の日吊し柿
人の声解すイルカや文化の日身の程を知れば秋爽七十坂過疎進む里ににぎはひ柿花火文化の日、故郷の空
朝の陽を浴び秋蝶の目覚めかな貧すれど男はダンディ秋の蝶酢橘搾る親父料理の仕上げかな秋の蝶
笑へないことの数多や笑ひ茸仁王様お食べ下さい笑ひ茸千年の吽形像や笑ひ茸笑い茸
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