エターナル・アイズ

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 7.花石(3)

​​​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「……ほう」 シャルンはレダンの部屋を出て、大きく息をついた。 体が暑くて苦しい。まるでレダンの熱を移されたようだ。脳裏に今まで唇を合わせていたレダンの表情が過ぎ

2020/12/31 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 7.花石(2)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「シャル…」 そんなことはない、と強がろうとした唇に、小さくキスされて顔を歪めた。息苦しさと鼓動に叩きのめされながら、息を喘がせる。「…陛下、もう少し、私にお任せ下

2020/12/30 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 7.花石(1)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「…言ってくれるね」 殺しても死なないとは。 レダンはシャルンの話に嘆息する。「まあ、その通りだったが」「…陛下は」 話し終わったシャルンは、少し首を傾げた。「まだ

2020/12/29 21:58

『猫たちの時間＋（プラス）』9.紫雲英の原(2)

​​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「紫雲英、紫雲英、どこまでも広がる、その原で」 ごろごろ転がって出口に向かったはずだが、どうしてもうまく転がれなくて目眩と吐き気がしたてきたから、俺は少し休むこと

2020/12/16 00:00

1910000ヒット、ありがとうございました！『猫たちの時間＋（プラス）』9.紫雲英の原(1)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 静かなノックが響いた。「入っていい」 パソコンから目を挙げた周一郎の声に、ドアが開いて以前よりも痩せた高野が現れる。相変わらず喪服を思わせる黒スーツの執事は、足

2020/12/15 19:49

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 6.糸繰り場(8)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「世話をかけます」「はっ」 庶民風の身なりに騎士風の礼を返しては仕方がないだろうに、バラディオスはいささかうろたえているようだ。少し頬の辺りが赤いが、部屋の暑さの

2020/12/15 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 6.糸繰り場(7)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ レース工房では、また別の発見があった。「あら…」 壁際で見慣れぬ庶民の格好で腕組みをして立っている、辺境伯、バラディオス・クレラント。「商人でございますよ、…奥方

2020/12/14 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 6.糸繰り場(6)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「……まあ…」 こちらです、と案内された糸繰り場は、薄暗い部屋に熱気が満ちていた。「お暑うございますよ、ご不快であれば、すぐにお外へお連れします」「大丈夫です。…あれ

2020/12/13 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 6.糸繰り場(5)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ オルガが戻って渡したのは、確かに粗末な衣類だった。「懐かしいわね」「懐かしゅうございますね」 ルッカと2人、手にした服と頭を包む三角形の布を眺める。「カースウェル

2020/12/12 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 6.糸繰り場(4)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「……お薬のせいですか？」「ん？」「私が来た時、リュハヤ様が添い寝してらっしゃいました……私はもう要らないと……陛下がリュハヤ様に命じられたと…」「……うん」 そんなことを

2020/12/11 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 6.糸繰り場(3)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「…か……陛下！」 耳元で悲痛な声で呼ばれたから、ゆっくり瞬いて目を開けた。「…シャルン…」「……陛下……」 目元を真っ赤にし、今の今まで泣き崩れていたのではないかと思うよ

2020/12/10 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 6.糸繰り場(2)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ エイリカ湖は周囲の山から流れ落ちてきた水と、恐らくは湖の底から染み出すように噴き出している地下水が合わさってできていると思われている。かつてレダンは一度ここへ潜

2020/12/09 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 6.糸繰り場(1)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 不愉快な朝食の席が終わって部屋を移動し、ようやく交渉の場を持てたと思えば。「美しい音色でしょう」「……」「これは特別な楽器でね、わざわざリュハヤのために作らせたのです

2020/12/08 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 5.レース工房(7)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 今度の焼き菓子は日持ちがするように固めに焼いたもので、お茶に含ませつつ食べるのだと教え、オルガはこれも1つ、じっくり楽しみながら食べた。「お話とはなんでしょう」「

2020/12/07 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 5.レース工房(6)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「さあ、どうぞ」「え……あの…」 ただでさえ豪華な部屋に引き入れられて、びくびくしていたオルガは、目の前にお茶とお菓子を出されて目を白黒させた。「あたし、あの」 リュ

2020/12/06 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 5.レース工房(5)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「皆様……そしてリュハヤ様」 静まり返った部屋にシャルンの声が響く。「私の至らなさより、不快な思いをさせ、すまなく思います」 顔を上げ、イルデハヤを、続いてリュハヤ

2020/12/05 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 5.レース工房(4)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「…リュハヤ、遠慮はわかるが、もう少しはっきりと話しなさい」 司祭が重々しく続けた。「働く者を悲しませるような振る舞いだと教えて差し上げねば……我らは臣下であるのだか

2020/12/04 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 5.レース工房(3)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 食事は和やかに進んだ。 温かいスープに味わいのある干し肉、多種類のパンに豊富な果物。 部屋と同じく、粗末で質素な暮らしぶりとは程遠い、豊かで傲慢な食卓。 周囲に

2020/12/03 00:00

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 5.レース工房(2)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「…まあ」 朝食の席で薄紅のドレスを着たリュハヤが目を丸くした。「シャルン様、また………あっ」 何か言いたげに呟き、慌てて口を手で押さえる。「ごめんなさい」「…何か？」

2020/12/02 00:00