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  • 30代Vol67・・・・・最終回 2枚の葉書・それぞれの模様

    僕はといえば。それから半年ほど経った。もう12月。彼女からクリスマスカードが届いた。「お元気ですか?私は元気にしています」元気かぁ。良かった。ほっとした。欄外に牧師さんのメッセージが書いてある。「いつでもこいよ!!」相変わらずフランクな牧師さんだ。同じ頃、瞳さんから受賞記念パーティーの葉書が届いた。大切な息子の肖像画が印刷されている。その絵で何か大きな賞を受賞したみたいだ。「再婚してNYに行くことになりました。NYで本格的に絵の活動をします。NYの住所~~」ありがとう。素敵なものをいっぱいありがとう。これからの人生の手本にします。それと、いっぱい時間をとらせたこと。謝ります。僕はといえば。バイクで中央突堤にきた。夕陽が冬空をグラデーションに染める。ビルや観覧車の照明がクローズアップされる。僕の大好きな時間。彼女...30代Vol67・・・・・最終回2枚の葉書・それぞれの模様

  • 30代Vol66・・・・・寂しさ

    30代、それは与えられる側でいられる神様が設定した最後の年代。ほとんどの人はもう与える側に立っている。どんどんいろんな事が身の廻りで動き出す。いつまでも自分だけの事を考えて、与えられる側にとどまることは許されない。時間は容赦ない方法で僕たちの精神を与えるものに変えていく。嫌だと拒んでも無理。最後まで戦っても勝てた人はいない。いろんな出来事が起こり、与える側へと追いやられる。抵抗し続けたものは代償をはらう。払っても逃れられない。より大きな代償を払うことになる。戦い抜いたあとには「自分」というプレゼントが何処からか送られてくる。彼女は無意識に僕を選び取り、寂しさを理解し、自ら苦難の道に挑戦し果敢に戦い自分を得た。僕は彼女から、寂しさと愛の相違を学び、自分に内在する問題があることを発見した。瞳さんは無意識に僕を選び取...30代Vol66・・・・・寂しさ

  • 30代Vol65・・・・・母

    カオリの家をでて、自分のアパートにかえることにした。いつまでも甘えてられない。帰る途中、実家に立ち寄った。突然、帰ってきた僕に母はいつも通り「野菜たべてるか?」と聞いてくる。僕は「食べてる」としか答えない。「なんか食べたいもんある?」「甘い卵焼き」高校卒業まで毎日リクエストしたが、ついに作ってくれなかった幻のメニューが不意に口をついて出た。母は醤油味しか作らない。「砂糖いっぱい使って体に悪いからあかんよ」子供の頃と同じ答え。やっぱり。でも母は敏感。いつもと様子の違うおっさんみたいな息子にキョトンとして。「ええよ、今日だけ作ったげる。あんたいっつもいうてたもんな」しばらくして、出来上がった玉子焼きを食べる。全然甘くない。僕は抗議した。「全然甘くない!!」母、「砂糖一杯入れたら体に悪いからちょっとにした」母にとって...30代Vol65・・・・・母

  • 30代Vol64・・・・・回復

    次の日も次の日もカオリは来てくれた。「ここまで来るのは大変だから、家に来なさい。面倒なんかみないよ。勝手にゴロゴロしとけば私も勝手にするから」わざとそう言う。本当は一人にさせるのが心配なだけ。居候させて貰った。カオリの仕事中に電話がなる。留守電になる。懐かしいセッちゃんの声だ。「カオリー!!薬の件、調べてメールしといたよ~!!あいつどう?元気出た?またね~」セッちゃんは看護士。多分、僕の薬のことを調べてくれたんだ。一週間ほど居候させてもらった。その一週間は、セッちゃんが来たり、えりちゃん、ユキオが来たり。毎日、夜明け近くまで飲んだ。それぞれ皆が乗り越えて来たことや、これからの人生。今まで語ったことの無かった深い部分まで話した。ユキオとこんな話をするのは初めてだ。30年生以上も生きてくれば何かとある。ぼうっと生き...30代Vol64・・・・・回復

  • 30代Vol63・・・・・友

    友人から電話。「どうしてる?」「別に」「ふーん」「何の用?」「今日いるか?」「うん」何時間か後、友人がきた。ユキオだ。電話で何かを感じとった。僕のおかしな雰囲気は感じていない振りをする。ユキオちょっと外へでて、食料とビールを買って帰ってきた。元気の無い理由は何も聞かない。普通の話をして、帰った。次の日、幼なじみの女の子を連れてきた。カオリだ。僕のことは何でも知っている。その子はストレートに「何かあったでしょ?」と聞くユキオが「そんなことどうでも良いよ」と遮る。適当に話をし、食事をして二人で帰っていった。カオリは「辛かったらうちにおいでよ」と言ってくれた。明日また来るらしい。涙がでた。涙が出るところまで回復していが、涙もろくなるのは鬱の証拠。次の日は掃除道具と食料を持って来てくれた。僕はちょっと行ってくるといって...30代Vol63・・・・・友

  • 30代Vol62・・・・・消せない記憶

    抜け殻だった僕は、次はクラゲになった。僕はまた家から出られなくなった。ベッドに入ったまま出られない。涙もでない。感情が欠落した感じ。部屋に見える物は思いでの物ばかり、眼もあけられない。瞳さんの書いた絵が僕の神経をいちいち刺激する。反射的に捨てる。またベッドに戻る。瞳さんの使っていたマグカップがまた刺激する。反射的に捨てる。今度瞳さんが来た時、一緒に飲もうと思ってとってあった「フォアローゼス」開けること無く、叩き割った。そうやって思い出を一つ一つ消していった。現実から抜け出したい。瞳さんへの想いと、彼女への罪悪感が入り交じる。寝られない。食事も喉を通らない。意識は前頭葉と頭蓋骨の隙間でキリキリしている。もうダメだな。30代Vol62・・・・・消せない記憶

  • 30代Vol61・・・・・禁断症状

    外へでて、ビールの自動販売機まで歩いていった。酔っぱらって、全然乗っていなかったバイクを何回も何回もキックする。腐ったガソリンの臭いがした。奇跡的にエンジンは掛かかる。あとはなぜか、中央突堤で泣いていた。途中の記憶が無い。僕は中央突堤の手すりにつかまりずうっと泣いていた。「ただの失恋、ただの失恋」いろんな言葉を自分にかける。女々しい男は泣きやまない。地べたに這い蹲りもがき苦しみ、這いつくばった。バイクは見えるところにある。乗って帰ろうとするが、たどり着かない。途中うずくまる。何時間か地面に突っ伏して寝ていた。眼をあけると、コンテナを満載した貨物船が港を出て行く。「瞳さん。行かないで」「僕を独りにしないで」「生きていけない」「もし、テレパシーが通じるなら今すぐ電話して」立ち上がる、フラフラと歩く、うずくまるを繰り...30代Vol61・・・・・禁断症状

  • 30代Vol60・・・・・未練

    ふと瞳さんのことが気になった。電話しようかどうか悩んだ。元気になったことを知らせるのなら、迷惑しないだろう。もう僕も声を聞いても大丈夫だろう。瞳さんに電話してみた。どうせとらないだろう。出ても笑って話そう。心配をかけているといけないので、元気な声で話そう。「瞳さん?」「どうしたの?元気にしてたの?」瞳さんは、相変わらず僕を心配していた。僕の至らないところ、好きだったところを長い時間をかけて、話してくれた。僕は、落ち着いて、幸せそうな瞳さんと話せて嬉しかった。以前のように話せている。やっぱりダメだ。いきなりフィードバック。ダメだダメだとわかっていても言ってしまう。「瞳さん、もう会えないの?」「会えないよ。終わったのよ」「コーヒー飲むぐらいいいじゃない?」「どうしても会えない」「好きな人ができたの?」「・・・・・・...30代Vol60・・・・・未練

  • 30代Vol59・・・・・過去から現在へ

    今は毎日、喫茶店に行ったり、こうして部屋でくつろいだりしている。NZへから帰って来てからは、スターバックスしか行かなくなった。スターバックスへ行けば、あの幸せだった時の感触を味わえる。音楽を聴き、ビールを飲みまどろみ、たまには友達と電話をしたり。繰り返しの日々、抜け殻でも、抜け殻らしく一応は生活している。日にち薬は効いてきた。退職金、貯金ももうほとんど無い。価値のある物は、バイク以外全部売り払った。生命保険も解約した。生活費は後ちょっと。よくもったもんだ。もうそろそろ潮時か。商店街で求人誌をもって帰って、丸印をつける。友人に仕事は無いか探してくれるよう電話もした。やる気がちょっと出てきた。もう後に引けないな。それでも喫茶店で同じ日々を過ごす。30代Vol59・・・・・過去から現在へ

  • 30代Vol58・・・・・転機

    転機が訪れた。瞳さんの個展が決まった。僕に連絡がくる。僕は凄く嬉しかった。「やっとここまできたね瞳さん」「うん。ありがとう」「邪魔ばっかりしてごめん」「そうね、結構邪魔だったね。うそうそ。でもね、もうやめたいのこの関係」「嘘でしょ?」「本当。キツめに言うよ。あなたの為に。あなたは子供、男として見れない。今の現状をよくみなさい。男として自信がもてるようになったら、また私の前に現れてね。私はお母さんじゃないのよ。こんなこと言いたく無いけどもう関わりあわないでね」愕然とした。それから何ヶ月は生きた心地がしなかった。瞳さんは僕にショックを与えるといけないので、だいぶ前から考えていることを黙っていた。僕も僕自身に感じていたこと、瞳さんがそう思っているだろうと薄々感じていたことが現実となって飛び出してきた。耐え難い辛さを感...30代Vol58・・・・・転機

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