ガキは夢見て終わるが、大人は……?
S君は90年代半ばに販売されたというブーツを履いていた。ネットで購入したらしい。「あの頃手が出せなかったものを買ったよ」と、S君は言った。90年代半ばというと、僕らは16、7歳になる。そのブーツがどのくらいの金額なのかは聞きそびれた。当時僕はそば屋でバイトをしていたが、1万円を超えるものは「高値」だったし、数万円ともなれば手を出すことはできなかった。10代から20代にかけて、高値で買えなかったものはたくさんあった。いまよりも物欲があり、好奇心もあった。が、警戒心もあって、高値のものに手を出すのにはどうしても身構えた。車の改造にお金をつぎ込む同世代は別格に見えたし、銀座のまわらない鮨屋の常連客は、「小僧の神様」(志賀直哉)のような住む世界が異なる人のようだった。いま思えば、それは少年(小僧)と大人の違いだっ...ガキは夢見て終わるが、大人は……?
2024/02/25 16:42