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  • 散人

    幽かな金木犀の薫りが出窓の隙間を通し、モニターに向かう私の嗅覚を擽る。外を覗き込むとまだ三分咲の黄色い小花が煙雨で見え隠れ、木々が揺らめきのリズムを刻みながらまるで誘っているように感じた。一息入れようと表に出て、まだ渋色が残る秋景色へとゆっ

  • そして錯覚

    陽射しの感触がまだ毛穴に残しつつ、撫でられる風はもう冷たさを帯び、朝夕は一枚羽織る気候になってゆく。都会の蜻蛉はずる賢くなかなか捕まえられないが今朝を境に、ララバイに引っ掛けられるように自ら降って来る。捕らえて尻尾だけ水に付ければ蜻蛉は何の

  • 秋ぞ更けにける

    京の都にゆるりと流れる伝統の質感が安堵を齎してくれる、時間が許せば年に一度は足を運ぶ。四季折々と言えども9月中旬に行くのは今回が始めて。個所巡りはとっくに飽きたので、大概一箇所でじっとしていることが多い。洛北の貴船川は鴨川と並び夏の川床が盛

  • 芒月

    何かの拍子で5時に起きた。月は反射されオレンジ色に光を放っていて、まるで燃え上がるように自己主張でも務めている。縢られた目蓋は取り返しのつかない事を宣告された。それから陽が昇っては沈んでいた。闇に完全装備される前に月はまた顔を出した、憎しき

  • 刻段

    うねる雲が迫って来る前に着いた。「ここでいいよ。」耳を澄ませた。雨の足音がひっそりと背後の縁側に触れ、木に止まって小声で葉っぱと愉しげに喋り、忘れ去った次元の懐かしい匂いを撒いていた。そして二人の前に水の暖簾を作り、互いの輪郭が風に煽られた

  • 腐れ縁

    平日のプールは空いていて思いのまま体を預けることが出来た。ほんの1時間でも解放され感悦に浸れたので随分と楽になった。テラスで足を投出し爪先ばっかり見つめているからといって、構って欲しい訳じゃない。そんじょうそこらで幾らでも相手にしてあげる人

  • サム、いま行くよ

    そこを曲がって吊り橋からもう少し登ると、あのか細い滝が現れるはずだ。この一帯は疎らに民家が点在する位で、緩やかな山道の傍でぼうぼうと伸びる野草や山菜、竹林の間に台風か何かで倒れた木々が見え隠れ、秋に蓄えた落ち葉と雪解け水で自然に出来た堆肥は

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