画家たちの夜
蜘蛛 -小茂田青樹「夜露」によせて あざみの棘に 夜がひび割れた ように見えたけれど あれは あざみとあざみを繋ぐ 蜘蛛の糸 かすかに震えて 月夜の晩に奏でられる 風の伴奏 細くしなやかな弦に 夜露とあざみと月光が 絡まった ひとつの世界へ 私の視線は捕えられ 糸に囲われた闇は 思想で埋め尽くされているから もう何も語らなくていい 鼻を掠めるどくだみの匂いだけで じゅうぶん わたしたちは始まりから 捕えられていた 蜘蛛の歩みに だからこそ もがいている もがいてももがいても あざみの癒えない痛みを どくだみで麻痺させるだけで わたしたちはいつまでも ひび割れた
2025/06/19 14:43