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  • 退路を確保せよ、肝要な命をもって1-1

    SAKAKI自動車の北海道S支社へO署刑事たちは訪れたのであるが、思った成果、つまり死体の身元に関する情報に明らかな思い違いが発生し、当人たちは当惑の色を隠せなく、名前の挙がった人物、マンションの契約書に記載された名前の人物は、あろうことか会社に出社、今さっきに通された応接室で面会を果たしたである。マンションの住所にその応対する人物はまったく身に覚えがなく、四月に北海道転勤は事実と認めたが、そのような場所には住んでいない、言われたような施設にも足を運んだつもりはない、答えは意外なものだった。 署に帰還する熊田の車内、昼食の算段をほぼ熊田の意見がスムーズに二人の女性を通過して、立ち寄った定食屋で…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ6-7

    私は来た道をしばらく眺めて、門の外、歩道を下った。 知らない場所、入り組んだ住宅地。 下りは迷いようがないの、だってどこかに道は通じているのだ、先は少しだけ見えてる。 上りとは違ってね。 ディーラーから一台の車が斜線に合流した。 店員が二人、いつもは下げない頭を無理やり地面に近づける。 固まったことを感じようともしない顔の筋肉みたいだ。 ディーラーの道を挟んだ反対に蕎麦屋が見えた。 それらしい店名。 各料理店にふさわしい店名もお客に対するわかりやすさに隠れて、思い込んだ名称の選択に違いない。 いくら凝っても、味は食べてみないことには判断ができない。 私は入り口の暖簾をくぐって、ドアを引きあける…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ6-6

    「雪国でしたか?」 「前の家?ううん。東京」 「私と一緒だ」共感、私ではない相手との意志の疎通。 「ねえ、ここで働いてみる気はない?」 「アルバイトですか?」私は見渡す。 「仕事よ、きっちりとした。給料も出るんだよ」 「大学があるので、それはちょっと難しいと思います、せっかくですけど」せっかく?本心だろうか。 「そう。残念ね。けど、気になったらいつでも来るといいよ。契約を結ばなくても日給は払ってくれるでしょうから」 「あの、何の仕事ですか。ぱっと見、人が働いているようには見えませんよ、ここ」 「一言では表しにくいな。それにあんまり人には言えないのよ。守秘義務ってやつでね」女性は目を細めて笑った…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ6-5

    コーヒーの香りが立ち込める。彼女はスナック菓子を頬張りつつ、体重を片側の足に預けて、キッチンの対面で水を補給する私にまた微笑みかけた。綺麗とは言いがたいが、内面は艶やかである。私の印象。もう少しこの状態が女性に続くようであれば、たぶんだけれど、顔は整っていくだろう。余計なこわばりがまだ細部には残っているのだ。私自身も特段かわいくはないと思ってる、自己評価だ。不細工と人によっては主張するだろう。ただ、各パーツを構成する大きさを変えずに、それを支える筋肉が本来の機能にのみ動けば、私の顔は変わるのではと思い、取り組んだ時期が過去にあった。まずは顔の血流が滞ってるであろう箇所をつぶさに観察すると、おも…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ6-4

    返答はない。帰ろうか。いいや、私は古民家を意識した引き戸に手をかけた。古すぎなくて新しくもありたい。贅沢なセンス。ドアを引きあけて右足を踏み出したら最後、体も大胆に屋内に滑り込ませてしまった。御伽噺に出てくる世界かもしれない、取り巻いたのはそんな錯覚である。 「ごめんください」私は勇猛活発に声を出し切った。すると切れそうな声が聞こえる。途切れらたらもう一度、二度目の音声を振る絞る。声の在り処は捉えていた、大丈夫、何かを言ってる。私はゴーサインと勝手に解釈して、正面のドアが閉まっているとも思わずにそこを引きあけて侵入してしまった。 声が届かないはずだ。市が管轄する体育館を思わせる空間だった。私は…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ6-3

    道は平坦となる。住宅も増えた。右手の山側に、私道を見つけた。しかし、先は鎖が行く手を阻んでいる。農園らしい、高速道路の越えた側にビニールハウスとかまぼこ型の建物。冬の期間は封鎖してたのかも、解禁後は通れるかもしれない。大学への道でもっとも近道とも思われる道は現在封鎖されていた。そこは、かなりの急勾配でたぶん車は登れないし、降りるには止まらないから危険で封鎖しているんだろう。人も車も通らない、だから雪がそこだけ残っているんだ。残雪で思い出した。雪国といえば当たり前なのか、昼間に家の周りの雪山をせっせと道路にスコップでかいた雪を放り投げてる光景は、私には衝撃的だった。いつか溶ける雪をなぜ、道路を通…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ6-2

    緩やかに坂を下りて、高速道路の通じる道に出くわした。道はまっすぐにも続いてる。私は逸れて登場した道、坂を上ることを選ぶ。傾斜地の町並みはどことなくその形状が似ている。左手には海が見えていた。息を切らせてのぼる。対向車ばかりで人とはすれ違わない、やはりみんな車がすきなのだろう。自分だけ持たないのは割に合わないとでも思っているんだ。左手に下がる道路が一本。それを通過。もう一本先に現れた道を私は選ぶ。インターの入り口が正面に、そこをぐるり回るようにガードレールと切り立った崖のみの道路をたらんと歩く。何もない、歩道もない。たまに、車が私を追い越していくも、クラクションは鳴らされない。だって、道は十分広…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ6-1

    スーパーを右手に駅へ向かう方角につま先を地面から離して先に運ぶ。特に目的はないに等しい、周辺の散策は駅から自宅マンションそれから大学とスーパーを結ぶ大まかな地図に頼って数日を生きた私。不自由を探していたのかもしれない、今思えば。橋を渡って、谷を望む。流々と水が流れ落ちる。雪解け水だろう。はじめてみる光景に私は端末で写真に収めた。あとでプリントアウトして手帳に張るつもり。大学の授業が忙しくなれば、こんな悠長な時間の過ごし方はできそうにもないんだろうけど、先のことをいくら思い描いても、まだその時間に私は到達するどころか、今を省みていないのなら、瞬間の楽しみに勤しむのも許してあげるべきだろう。受験勉…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ5-2

    外を眺めた。何気なく。車が一台、真向かいの坂をぐんぐん登っていく。視界のさらに右上に私が通う大学が建ってる。明らかに古い白っぽい建物と、近代的な青みがかった窓が特徴的な黒っぽい建物。一度、構内をぶらりと歩き回った。学校は休みの期間で人はほとんど歩いていなかった。足元に雪が残っていたのには驚いたな。かなりの豪雪地帯だと、話には聞いていたけど、もう四月なのに。山が近いからたぶん、冬は寒いんだろうな。それよりも、来週の入学式を焦点をあわせないと。 ぐらぐらと鍋が吹き零れる音。慌てて私は、コンロに飛びかかる。早速噴きこぼしてしまった。あれだけ、火から目を離さないようにと母に言われていたのに。冷蔵庫に貼…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ5-1

    四月、変遷の時期にこの土地に足を踏み入れた。マンションは決まって、親が昨日実家に帰り、今日からは本格的に一人暮らしがはじまる。期待よりも不安のほうが膨らむ。気の置けない友人はできるだろうか、あどけない私の顔では……友達はもっと大人びてるのかも、想像は自己評価の低さにいつも行き着くのだ。やっぱり、あまり考えないほうがいいんだ、わかってる。そんなことは十九年付き合ってきたのだ、今更という感触。カーテンは事前に購入した淡い緑をカーテンレールに取り付けて、空気の入れ換えにあけた四階の窓からそよそよまだ冷たい当然に冬の空気が室内と屋外を覗く私の頬に際限なく衝突。父は家を出るまで、機嫌が悪かった。私と離れ…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ4-2

    女性の管理人は割合、話し好きが多いと熊田のデータがはじき出していたが、書類を持ってきた人物は無口で怒っているような渋面がデフォルト。言葉は必要最低限であり、調べが終わったら鍵は一階のこの部屋のポストに入れて欲しい、管理人室には尋ねないで欲しい、そう言い残して部屋をあとにするのだった。 熊田はリビングに戻る。確認。死体の氏名と前所属会社が書類によって判明した。ただし、生年月日は一と九がすべて。端末の連絡先も一と九でほとんど占められている。偶然だろうか。契約者の保証人は、同姓の名前が書いてある、家族か親戚だと思われる。 種田が書類を受け取ると署に待機する鈴木に調べるように連絡を入れた。カーテンが引…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ4-1

    施設の封鎖は最小限に抑え、死体を鑑識が運び出し、周囲の住宅への関心を引かないように作業をひっそり執り行う。遺体を乗せた鑑識のバンを見送り、出入り口を封鎖。警官は立たせずに熊田たちO署の刑事は、施設管理に雇われる弁護士佐山明から聞きだした死体の自宅住所に向かった。住まいは現場から程近い場所であり、車は施設に止めて、真昼の空の下、徒歩で数分の時間を要し、たどり着いた。現場に向かう途中に見えた赤い外壁のマンションが目的の場所であった。種田がマンションの管理人から鍵を借りて、三名の刑事は最上階にエレベータで昇り、三つの扉の真ん中に教えられた部屋番号を見つけた。一階ロビーの郵便受けは番号、部屋にも個人名…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ3-5

    「引き抜く相手を知らない?ちょっと疑わしいですね」熊田が疑惑の目を向ける。 「わ、私は言われたとおりにお伝えしてるまででして、それよりも、もう、そろそろ私もこちらを出ないと。次の仕事が待ってます。引き止める材料がなければ、ここでお暇しますが?」 「管理者の連絡先を教えてくださらない?」斉藤が言う。 「お答えでき……」佐上明の言葉を斉藤が遮る。 「いずれ教える。その手間が省けるのだから、言ってくれたほうが、あなたもこちらも仕事はスムーズに運ぶ。時間に見合った仕事がしたいのであれば、ここを早急に抜け出し、次の案件に取り掛かるほうがベストだとは感じません?効率を重視しましょうよ、端末でもう一度連絡を…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ3-4

    「旅行に行きたい、行くつもりだ、そういった発言をこの女性から聞いた覚えはありますか?」熊田はきいた。女性の名前が判明していない事実というのは言葉にするだけでも、かなりの苦労を強いる。Aさんとでも仮名をあてはめたほうが、よっぽど回りくどい言い方を避け、それにまた時間の短縮にもなる。 「さあ、私は仕事上のやり取りしか」短髪の女性は一往復、首を真横に振った。 佐山は哀悼の意を体現する、または態度に表すどころか、腕にはめた時計を何度も確認していた。 「名前を教えてくださらないのは、何か特別なわけ、あなたに不利益になるような事態を想定している。そうに違いないわ」花を摘むように斉藤が予定を気にかける佐山に…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ3-3

    「送信先を調べてみますか?」種田は顔を寄せる熊田に指示をこちらから提示してみた。 「ここでは特定のアドレス利用が必須」短髪の女性は死体と距離を取り、膝を抱えて言った。一斉に全員の視線が黙っていた彼女に矛先が向く。 「それはつまり、仕事上利用するアドレスということですか?」種田がきいた。立つとやはり肌寒い、足元の暖かさは床暖房によるものだ、種田は足元を伝う冷えに悩まされる女性署員のひざ掛けを思い出した。広い室内を効率的に暖める方法に床の暖房を選択したのか、隙間風を完全に遮断する作りならば、内部の空気を暖めるよりも常に接してる足元を暖め、そこから体の温度上昇を選択したのだろう。しかし、床は電熱かそ…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ3-2

    佐上は腕を組み、小さい円を歩いて足元に描いき、止まって、唸る。「うーんと、昨日は月曜だから、三日前、土曜の午前中に今日の約束を交わしたとおもいますが、確認を取りましょう。ちょっと、お待ちを」床にひとりでに立つように置いた鞄から黒皮の手帳を取り出してページを捲る。「はいはい、土曜ですね。ああっと、彼女は四月半ばに前の会社へ退職届は提出していたようですね、届けが受理され次第、それと抱えた案件が手を離れたら会社を辞めるつもりだったと聞いてます」 「弁護士のあなたが会社の人事を管理してる。通常の会社様式ではありません」熊田は断言した。しかし、佐山は怖気付くどころか、顔を一つ変えない。 「契約に関しての…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ3-1

    一時間後、担当の弁護士佐上明が姿を見せた。ワックスで後頭部に撫で付けた髪の毛は下ろすと相当な長さ。体格は標準。濃紺のビジネスバッグを手に提げて、恭しく彼は刑事たち三人に名刺を渡した。種田は受け取ると名刺をポケットに放り込む。そして、死体の観察に舞い戻った。鑑識の到着は交通事故のため遅れてるらしい。渋滞を避けた高速道路で遭遇した事故が原因だそうだ、熊田に入った一報である。 「施設内を調べるつもりですか?」佐上は落ち着き払い、目端の利く鋭さで刑事三名それぞれに視線を送った。通常は一人に絞って話を進めるが、現時点で役職の公開や彼と名刺交換した刑事は一人もいない。斉藤彩子はまだ新しい役職の名刺が配られ…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ2-4

    「先週からたびたび見るようになって、名前もそういえば聞いてません。ここは一人で作業を行う場所ですから、意思疎通は必要ないんです。……前の仕事と掛け持ちで、週末だけここの仕事を請け負っていたらしい。今日は平日ですよね、会社を休んだか、辞めてこっちに専念したのかも。わからない。会って話したのは一回きり」 「こちらは会社ですか、見たところ一人用のブースがあるだけに見えます」 「作業内容は言ってもいいだろうか。ちょっと待ってください。聞いてみますから」女性はふらつく足取りで立ち上がると、一つのブースに入った。出てきて、告げる。「警察であろうともこの施設の作業内容及び施設内を無断にて調べる行為を禁じます…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ2-3

    こぢんまりとした玄関、靴箱、それには靴べらが下がる。観葉植物が二鉢。来客用の同形のスリッパが四足。敲きと室内の段差はない、格子の溝が入った床は地続きに正面の扉へ導線が引かれている。種田は、そちらのドアを引きあけて内部に声をかけた。返事が聞こえた。こちらを呼んでいる。警察なのであるから、間違って侵入しても不当は扱いは受けない。それにここは土足禁止をはっきりと汲み取れる佇まいではないのだから、という二つの言い訳を思い浮かべて通報の建物内部へ一行は進んだ。 天井は届かないほどに高く、風船を飛ばしてみたら忌々しげに中の空気が抜ける間まで見つめていられる。外側から観察するに建物はほとんど、この空間が占め…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ2-2

    それから三名は熊田の車に乗り込み、現場まで急行した。 大よその位置を把握していた熊田は、現場周辺の地図を確かめるために種田に道案内を頼んだ。昨年買い換えたばかりの新車であるが、熊田の車はナビが非搭載だ。純正のパーツであっても不必要だといって、取り除かせていた。音は緊急時のラジオが聞ければ申し分ない。もう取得するべき新しい情報をむやみに取り入れる年齢はとうに過ぎたと、考えてる。的外れな行動とディーラーは思ったに違いないが、店を訪れてその場で契約を結んだのだ、これぐらいの譲歩は相手方にとっては聞き入れるべきだろう、と熊田の主張。 「蕎麦屋とディーラーの道を右折です」種田は取り出した端末を既にしまっ…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ2-1

    突然の出動要請。部署に一報が舞い込んだ。連絡を受けたのは鈴木である。S市との境目に位置する現場に上層部は二の足を踏み、こちらに出動の要請をかけたはず、鈴木は電話を切ると、詳細を応接セットに座る二人の上司に振り向いて現状を報告した。 「参りましょうか」斉藤彩子は立ち上がる。 「ええっと、誰の車を出します?」鈴木がコート掛けに走りよって、デスクを離れた。 「熊田さんとそちらの種田さんと私で行ってきます。二人はここで待機を」 「待ってください!」鈴木の張り上げた声に、腕を組んで目を閉じた相田が起きた。「僕らを置いてくつもりですか?」 「また事件の捜査要請が入るとも限らない」斉藤は平静に言ってのける。…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ1-4

    「お客?」こんな早い時間に誰だろう。熊田は思い当たる人物がいないことを表情で示した。 「伝えましたので」機械のような種田が颯爽と廊下に消えた。髪が長ければ確実に風にそよぐ速度である。 「聞こえちゃいましたね、絶対に。また口を聞いてもらえない期間が続くのか」 「話さないのならば、会話をしない状況は好都合じゃないか」 「先輩としての威厳というか、立ち振る舞いに支障が出ます。それに相田さんは絶対こんな状況見逃しませんし」 熊田はきっちりとタバコを根元まで吸い、ショートサイズの缶コーヒーを飲み干すと鈴木を置いて室内に戻った。 女性がきりっと立ち上がる。タイトなスーツに肩口までの髪。種田と同年代か、もし…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ1-3

    「粗野磊落の部長がですよ、私に助けを求めるはずがありません」 「どうして部長が書類の送り主だと思ったんだ」熊田はもう一度きいた。 「封筒の宛名に僕は部長としか話していない内容をにおわせる印がついてあったんですよ」 「印?」 「最新機種、今春に発売される一眼レフカメラの製造番号です」 「部長はカメラに詳しいのか?」熊田がはじめて聞いた部長の趣味である。 「それはもう僕なんかよりも」鈴木はここでタバコを咥えた。熊田がライターで火をつける。鈴木が軽く感謝の合図を送った。「だって、車にはいつもカメラを積んでるっていってましたよ」 「共通項はカメラの最新機種と部長の人事異動か。確証はないが、疑いは強いか…

  • 何卒、そなたの白い肌を私にだけ、お見せくだされ1-2

    「アメフトの練習か?」 「何を悠長なこと言ってるんですか!」鈴木の息は切れてる。どうやら部署からではなく、一階から階段を上った息切れと熊田は見極めた。「部長、今日は来てませんか?」 「まだ誰も来ていない、お前が一番手だ。それがどうした、いつものことだ」 「うちの部署に新人が入ってくるって、熊田さん知ってましたか?」鈴木はドアの隙間から顔を出した状態で処刑を待つ人物そのものに見える。乱れた呼吸はだいぶ整ってきたようだ。上がった眉が際限なく定常を越えていた。それほどのニュースらしい、彼にとっては。 熊田はマイペース、煙を肺に取り入れた。「季節を考えれば、誰かが抜けて誰かが入ってくるだろう。驚くこと…

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