閉じ込められた部屋(73)
9 その日、美和は自分でもどのようにして家に帰ったのか分からなかった。 気づいたら自分の家のリビングで一人、呆然としながら床に座り込んでいた。手元のバッグの中には、真尋の部屋から持ち帰った手紙が入っていた。 もう病院に行くのが怖かった。 病院で、真尋の顔を見るのが怖かった。 この手紙を見る前の美和は、真尋が目覚めた時、真尋にどのような言葉をかければいいのかが分からなかった。あの夜のことに触れずに、どのように真尋を勇気づければいいのだろう。そのことだけを考えていた。 だけど、この手紙を見た後の美和は、全く別の恐怖に囚われていた。 病院で目を覚ました真尋の口からどのような言葉がこぼれ落ちるのか。そ…
2024/04/30 21:00