雑念ユーモア短編集 (85)腹具合
人の腹具合というのは実にデリケート[繊細]に出来ている。小堀は、今日に限ってどうも腹が減るなぁ~…と雑念を湧かせていた。いつもはそうも思わないのだが、昨日は余り食欲がなかったため、そのギャップが雑念を湧かせたのである。『どうも腹具合だけは思うに任せない…』自分の意思ではどうにもならないと小堀は深いため息を一つ吐(つ)いた。「お父さん、そろそろ夕飯ですよ…」書斎で執筆する小堀に妻がドアを開けず声をかけた。「ああ…」小堀は小さく返した。今日の原稿を出版社へ明日の朝までにネットで送る必要に迫られていたが、コレという随筆の原稿ネタが浮かばなかったこともあり、仕方なく書斎のデスクから重い腰を上げた。と、いうのは口実で、腹具合が空腹に苛(さいな)まれていた・・というのが真相だった。夕食を貪るように食べ尽くすと、ようや...雑念ユーモア短編集(85)腹具合
2024/05/25 00:00