イタリア紀行 12 ボローニャ ハム屋の記憶街の記憶
ふと視線が古い建物のファサードに止まる。そこに刻まれているのは、威厳ある表情で前方を見据えるひげをたくわえた男性のレリーフ彫刻だ。石の中に永遠に閉じ込められたかのようなその顔は、静かな威圧感を放ちつつも、どこか物悲しさを漂わせている。この男性は誰だったのだろう。何世紀も前に生き、ここボローニャの街で重要な役割を果たした人物かもしれない。彼が見ていた世界は、今とはまったく異なるものであったに違いない。戦乱の時代にあって、人々の生活は常に不安定で、彼もまたその中で苦悩しながらも、自分の役割を全うしたのだろう。石に刻まれた彼の顔は、時の流れと共に風雨にさらされ、周りから少しずつ削られていく。彼のように何かを成し遂げ、誰かの心に何らかの影響を与えることができたなら、この場所に永遠に晒され続けていいのだろうか。石に...イタリア紀行12ボローニャハム屋の記憶街の記憶
2024/08/31 19:52