骨董商Kの放浪(40)

骨董商Kの放浪(40)

金曜日午後6時のエリタージュ・ハウス。まだ客はまばらであるが、スタッフの目配りや動作に、なんとなく嵐の前の静けさを感じさせる。Reiのあとに続いて、ぼくはあたりを伺いながら、正面のエレベーターへと向かいかけたとき、「上じゃ、ありませんよ」のReiの声にびくっとして足をとめる。いつもSaeとは二階の個室だったので、ついエレベーターに向かってしまっていたのだ。 「Kさん。初めてですよね? ここ?」Reiがやや訝しんで訊く。「あ、ああ。うん、もちろん」スタッフの一人が「こちらでございます」と左手の部屋へと先導した。初めて入る一階のメインルームは、150㎡ほどのスペースに大小十幾つかのテーブルが配置さ…