骨董商Kの放浪(38)

骨董商Kの放浪(38)

「すみません。急いでないので、ゆっくりでお願いします」ぼくはやや身を屈めると、後部座席の両脚の間に置いた箱の位置を最終調整した。風呂敷に包まれたこの箱のなかには、Z氏から預けられたあの埴輪女子の頭が入っている。両方の脚で挟み込むと風呂敷の結び目にしっかりと手を添え、ぼくは万全の体勢をとった。「かしこまりました」ハイヤーの運転手はミラー越しに確認したのち、白い手袋をギアからハンドルへ移すと、静かに車を発進させた。「大丈夫ですか?」隣席の長い髪がなびくように揺れた。「うん。これで動かない」いつもの軽装とは違うグレーのパンツスーツが目に入る。ぼくの返答に、Miuはにこりと微笑んだ。 この車の行き先は…