骨董商Kの放浪(36)

骨董商Kの放浪(36)

新幹線で名古屋までいくと、地下鉄に乗り換え終点で下車し、そこからバスに乗り込んで30分ほど走った。時おり窓から見える桜は、まだ五分咲きくらいだろうか。ぼくの両膝の上には、風呂敷に包まれた箱が一つ乗っている。バスは、広大な敷地に入ると3分程走行し、やがて正面玄関の前で停まった。何人かが席を立つ。ぼくも風呂敷包みを片手にリュックを背負うと、彼らのあとに続いてバスを降りた。すぐに『中国古代の暮らしと夢』という展覧会の見出しが目に飛び込んできた。三十数年前につくられたのであろう巨大な建物は、高度経済成長期の名残をとどめた、ある種の堅牢さを漂わせていた。ぼくは、そのだだっ広いエントランスをくぐり、受付へ…