マキリップの小説《イルスの竪琴》3部作で描かれる、時に過酷な旅と美しい情景
「そなたが、私がこれほどまでに愛した者でなければよかったのに」……人間が抱きうる欲望のうち、知を求める気持ちは私がとりわけ愛おしいと感じるもので、けれど同時に「知りたい」というのはとても危険な願いの発露でもあると分かっている。ある問いにうっかり手を伸ばした瞬間、その勇気ある頼りない腕は恐ろしいほどの力で何かに引っ張られてしまい、身体ごと容易にはこちらの世界に戻ってこられなくなる。おそらくはモルゴンがそうだったように、彼を見ていた私もそうなってしまった。
2023/10/25 02:09