庄司薫『ぼくの大好きな青髭』
主人公であり語り手でもある薫君は、麦わら帽子に昆虫網に付け髭という奇異ないでたちで真夏の空の下に突っ立っていて、その場面からこの物語は始まる。これまでの三作は毎回、家の中から始まっていたのだから、おお、なんか新鮮、と思う。 というかこの作品においては自宅のシーンは、ほんのわずか、自殺(未遂)して生死をさまよっている高橋との思い出を回想する時にだけ登場する。他はオール新宿ロケ。新鮮。 レギュラーメンバーの小林と由美は、電話でのみの出演。これも新鮮。 とはいえ二人は最後の最後に姿を表し、全てを持っていく。本当に全てを持っていく。その根こそぎっぷりがかっこよくて、私は泣いた。由美のあの短いセリフ、あ…
2025/03/29 23:39