トーベ・ヤンソン『ムーミン谷の冬』山室静訳、翻訳編集:畑中麻紀
トゥーティッキは、肩をすくめました。 「どんなことでも、自分で見つけださなきゃいけないものよ。そうして自分ひとりで、それを乗りこえるんだわ」 お日さまは、いよいよ燃えるように輝きはじめました。(p.170) ムーミンたちは冬眠をする。十一月から四月まで。そういう種族なのである。したがって、彼らにとって冬とは、空白の季節だった。これまでは。 新年を迎えて間もない、ある晩のこと。冬眠中のムーミントロールの顔に、 月明かりが静かに差し込む。その時、彼の目が開いた。彼は冬眠から目覚めてしまったのである。先祖代々、誰も経験したことがないという目覚めを経験したムーミントロール。家族の皆は平常通り冬眠してい…
2023/05/16 23:44