貧者の一灯・歴史への訪問
ある時、権次は仕事で船に乗って、何日も家に帰れない事になりました。心配するお母さんに、権次は言いました。「大丈夫、おれは運が良いからな。・・・そうだ、運が良い証拠を母ちゃんに見せてやるよ。俺が出かけて十日たったら、家を焼いとくれ」「えっ、家をかい?」驚くお母さんに、権次はにっこり頷きました。「そうさ。ちゃんと焼いておくれよ」権次が船に乗って海へ出て十日がたつと、お母さんは約束通り家に火をつけました。小さな家はあっという間に火事になり、すっかり燃えてしまいました。その頃、権次は舟の上で、くんくんと鼻をならしながら仲間に言いました。「あれ、今、俺の家が燃えてる。こりゃ火事だ!」それを聞いて、仲間たちは大笑いです。「あははは。こんな遠く離れていて、火事がわかるもんか」でも権次は、すまして答えました。「まあ、帰っ...貧者の一灯・歴史への訪問
2023/02/24 18:49