あかあかと日はつれなくも秋の風
あかあかとひはつれなくもあきのかぜ 元禄2年(1689)7月17日、金沢での作。この日、芭蕉は立花北枝の源意庵に招かれて掲句を詠んだという。ここから見えた夕日かもしれないが、おそらく、日本海の夕日が見えた旅路での着想のような気もする。いずれにしても、暦の上では秋ではあるが、それとは構わず、夕日は赫赫と夏の気色を示している。一方、折しも吹き渡る風は秋の爽やかさを肌に感じるという、季節の変わり目の微妙な感覚を捉えた句と言えよう。 一説には、芭蕉が、掲句の「秋の風」を「秋の山」として、北枝に問うたところ、「山といふ字すはり過て、けしきの広からねば」と批判されて、「秋の風」に落ち着いたとされる。たしか…
2021/03/31 07:08