林桂・句集『遠近紀行』ウエップ
自づから陽差しに集ひ花返る 林 桂 陽の中に出て行く径や野紺菊 同 蹲るやうに若松林なり 同 蓬生の闇を育てて日暮かな 同 朝顔に深々と射す宇宙かな 同 長崎の空の色なる海の色 同 金魚玉に虹色現れし夕日かな 同 寒昴未来に追ひつくことなくて 同 枯れてゆく明るさにゐる水の神 同 噴水の輝くところから崩る 同 潮風の届かぬ陸や夏椿 同 かなかなの風に落ちたる水の音 同 天上に散る花のある睡さかな 同 図書館の噴水雨に濡れてゐる 同 蟬の穴より月光の漏れ出づる 同 林桂『遠近紀行』
2025/06/19 08:34