紅ひとつ 夢と思いを 刷り重ね#03
新佃の叔母の工房へ出かけて、脇からその手間を見てると、年がら年中浮世絵を刷ってるわけじゃなかことが判った。他にも、ちょぃと豪華な年賀状や案内状なんかも刷っていた。そんな仕事を「数モノ」と呼んでいた記憶がある。きっと単価は低いけど、数が多くて納期もきついんで「数モノ」と呼ばれていたんだと思う。 それでも伯母の刷る年賀状は、どこか浮世絵の名残りをまとってると子供心に思った。鶴が飛ぶ空のぼかし、正月らしい紅白の色合いの重ね方、微かに金粉を散らしたような華やかさ。今思えば、あれは刷りの技術の高さがなせる業だったのかもしれない。だからこそ、そうした「数もの」が旬になると叔母に仕事として舞い込んで
2025/03/31 02:32