第9話 楽して弦を押さえる
メキシコで見たジャズ生演奏。キューバ人のバンドによくお目にかかれる。 ところでダニエルは、開放弦を使うことを僕に強く勧めた。コードを抑えるときに、左手の人差し指で一列ズバッと押さえ、他の指の抑える位置でコードを構成するやり方をセハというらしい。でもダニエルはできればきれいな音が出るようにセハをそれほど重要視していなかった。もちろん押さえなくてはいけないときもあるが、それはやむを得ずやるという感じだった。 そんな風にして、とにかく初心者の僕にダニエルは、最初から指の形が難しかったり、難解な練習は一切与えなかった。それから音符も一回も使わなかった。コードがあって、メロディーがある。それでいいじゃな…
2021/02/26 00:00