陸影を浮かべ
対岸に浮かぶ陸影をながめていた。あの向こうには光彩陸離な繁華街があって、この刻限、彼女は誰かとすごしているに違いない。 この夜を誰かとたゆたう彼女、そうかんがえるだけで胸が苦しくなる。一日何も食べていない。 失恋と呼べるだろうか。告白もしていない。気持ちがつたわっているかさえ定かでない。よもや、これが本物の恋といえるのかすら定かでない。いまさらそんな。 定かなのは、彼女のアカウントがこの手にひかっていること、そしてそれを過剰に意識していること、消して忘れることは不可能だ。彼女のアカウントは彼女の名前だった。 記憶が憔悴に鞭を打つ。恋だろうが同僚だろうが知ったことじゃねえ、と身を
2024/09/27 17:00