91回目「鳥」(アルフレッド・ヒッチコック監督)
動物を見た時、「かわいい」と思うと同時に何とも言えない不思議な気分になることがある。例えば、猿回しの猿が、芸をするのを見た時。彼らは、確実に人語を理解し、人間との意思疎通もできる。仕草や表情なんかを見ても立派な感情を持った生物であることが分かる。しかし、彼らは話せない。言語がないのである。感情があるのに言語がないというのは、どういうことなのだろう。「嬉しい」とか「悲しい」と感じても、「嬉しさ」「悲しさ」を表現できる言葉がない。「嬉しさ」「悲しさ」といった概念は頭の中に確実に存在するのに、それを言語化できない。概念と言語を繋ぐ橋がないのである。そして、この橋がない状態が動物にとってはスタンダード…
2022/03/29 19:40