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  • うの華4 52

    夫は常に自分には愛想が良い、愛妻家の鏡の様な人物としてこの長年来たものだ。だと言うのに、一体如何したというのだろうか、何だか何時もと勝手が違う…。妻は夫の様子を不審に思った。「子は可愛いものでしょう。」細々とした声で、遠慮勝ちに妻は夫に念押ししてみる、が、夫から妻への同意の言葉、相槌等は全く返って来無かった。彼女は再び同じ言葉を夫に掛けたが、結果は同じだった。彼は黙した儘身じろぎもせずにそこに立っていた。妻は夫のそんな様子を見詰め、やや考えていたが言った。「あなたはは子供が可愛く無いんですか。」一寸言葉尻に批判めいた響きを効かせてみる。すると夫の表情が心持緩んだ様子に見えた。彼女は気持ちを強くした。そこでこの機に自分の立場を常の優位な状態に戻そうと奮起すると、そうなんですね、と断定する様にきつい感じで言っ...うの華452

  • うの華4 51

    「如何したんだい。」反射的に夫は妻に声を掛けた。「ずいぶん顔色が悪い様だが…。」そう言いつつ夫はハッと思い当たった事が有った。「あれだね、またあれが悪い風を吹かせたんだ。」我が家に、この家に、何時も悪い風を吹き込むんだ。あいつは逆風の様な奴だのう…。最後は夫の声も嘆息気味となり、か細く土間に向けて落ち途切れた。勝手口はシンとした切り、裏庭の方からも特に物音は聞こえて来無い。夫がこうなると妻は気落ちしていられない。彼女は一応庭に気を配ってみたが、如何したの?等、子供の声が洩れ聞こえて来ても、彼女の息子が孫に答える声が細々と聞こえて来ても、そんな事、もう向こうに気など配っていられ無いと彼女は思った。今は夫の事だけをかんがえるのだ、自分の子である息子はもう人の親、子の事は親に任せれば良いんだ。彼女は決意して、庭...うの華451

  • うの華4 50

    おいおい。声に気付いて振り向くと、彼女の背後敷居の上に、何時戻って来たのか彼女の夫が立っていた。「親も馬鹿は無いだろう。」私はお前の夫だよ。夫の私が馬鹿なら妻のお前も馬鹿だろう。彼はそう言うと明らかに機嫌を損ねた顔付きになった。不機嫌そうに目を吊り上げている。この顔は夫が可なり立腹した証しだった。『何か気に食わ無い事が有ったのだ。』瞬間妻は悟った。不味い事になったわね。彼女は思った。夫の不機嫌を宥めるには如何したら良いだろうか。一方で裏庭の様子を気に掛けながらも、彼女は眼前の夫の尋常で無い様子から、今の場合こちらの方が自分にとっては重大事だと受け取った。僅かな間に何が自分の夫の心情にこれだけの影を落としたのだろうか。彼女は彼女の視線を繁々と夫に注ぎ彼を気遣いながら、一方では彼の背後の家の内の気配をそれと無...うの華450

  • うの華4 49

    否、いるんだ。誰かいる。戸口の影になった部分だ。誰か人が隠れているのだ。彼は思った。『誰だろう?。』。父だろうか?、一旦その場を去った後、父は再びここへ戻って来て、戸口の影からこちらの様子をそっと窺っているんだろうか?。それが父だと思うと、彼は何時父がこちらへ飛び出して来て、ゴン!とばかりに自分に拳を振り下ろすのかと、いい知れぬ恐怖に襲われた。ブルル…、っと彼には身震いが起きた。それからゾォーっと背筋に寒い物が走る。安堵の後の恐怖に、彼はヨロヨロ…と、思わず2、3歩勝手口の戸口から遠ざかった。背後に注意を向けつつ数歩歩いた彼は、ここまで来れば一安心、一呼吸置ける間合いの場と自身が判断出来る場所に来た。すると彼の目に子供が円な瞳を開いて不思議そうに彼の顔を見上げているという丸い顔が映った。はたと、気が付いて...うの華449

  • うの華4 48

    もしかしたら。彼はハッとした。『こちらの様子に合わせて彼等は口を閉じたのだろうか。』彼は推察したのだった。機嫌を損ねたかな。親の話を盗み聞きするとは。自分は親から子としてはした無く思われたんだろうか。思わず彼の頬は赤らんだ。恐る恐る屋内の気配の様子を見ながら、彼は反らしていた顔の方向、自分の家の母家へと自らの体の向きを変えた。そうして具に彼の家の勝手口を窺った。すると家の内直ぐの場所から彼の父の好きにしろとの声が上がった。続いてバタバタと去っていく足音が聞こえ、その足音は小さくなると聞こえ無くなくなった。あの様子では父さんは家の面方向に向かったのだ。と彼は察知した。危うい危機は去ったなと、彼は安堵したが、また一方ではガッカリもした。怒った父から叱られる事が無く、折角の彼の父の息子に対して行われる修羅場を、...うの華448

  • うの華4 47

    この家の裏庭では、この屋の若旦那であるらしい男性が焦ったく思いながら苛々していた。彼は一旦は彼の親に虚勢を張ってみた物の、その結果酷い目に遭うだろう事も予想していた。なので彼は直後から、内心ハラハラとその場を動かずに狼狽えていた。が、彼が恐れる様な親の反応は、彼に対して一向に起こって来無かった。彼の親がこの庭に現れ出た気配も無い。ましてや彼を咎める声さえも無かった。『出たは出たんだろうか。』彼は親が庭に姿を現す事だけはしているのかと考えた。しかし彼の背後ではこそりとも音はし無かった。その割には後方が静か過ぎるなと考えた彼は、『黙って睨み付けられているんだろうか?。』とも思った。裏口に背を向けていた彼には、自分ではその様子が把握出来無い事から、彼の前方で自分の方を向いている彼の子供の顔付きから、自分の背中の...うの華447

  • うの華4 46

    「また以前の失敗を繰り返すんですか。」一郎の時に懲りたでしょう。幼い子の前でその親を怒鳴ったり、乱暴したりと、お父さんの怒った姿を見せたら、あの子はその後如何なりました。妻は夫に切々と訴えた。それ迄はよく慣れた、とても可愛い子だったのに…。「それっ切り。お父さんは勿論、お父さんの連れ合いの私に迄、それはもう、他所他所しくなって…、あの子あれ以来変わりました。始終気を張って、遠慮して…。「ここを出てからは、今じゃ寄り付きもしない。」あの子はあれ以降、親に付いた切りだったんですよ。お父さん、今もあの時と同じ、酷く怖い顔してますよ。もしそんな怖い顔で今出ていけば、お父さん、本当にあの子もそれっ切りですよ。あの子も親にくっ付いて、あの孫同様私達祖父母にはもう慣れてもくれ無くなりますよ。…。「今から思えばあれが境目...うの華446

  • 「平日」

    平日は日常一寸好い物御馳走と言う人も実際、食もある、衣食住気付いたら良い場所人も声も歌もある、相和す合奏実際、営みがある、喜怒哀楽目覚めると善い所だった今はそう感じる町並み、通り、抜けて行くと開けた場所から望む、山、また山の連なり実際、草花が見え、緑に青、群青と藍青色が帯を引き広大遥かに山、峰、頂き、中腹に木立の影、窪み蒼天は紺碧に上空空色と青、白、通常の天空日常は平日…囃子詞…2022年母の誕生日によせて祝「平日」

  • うの華4 45

    子供の父の方は自分の両親がいる場所、彼の後方に向いて意識が向いていた。彼はフンという態度で以って屋内にいる自分の父の言葉を受け流した。「何も分かってない年端の、子供を育てている真っ只中の、文字通りに親の気持ちが、君達なんかに分かるもんか。」彼は腕組みなどして、この庭に向けて開いている母家の入り口には背を向けた儘、如何にも大層に言ってのけた。「共に無学な人間くせに、私は大学と名の付くところを出た人間なんだ。」もう勘弁ならん!。お父さん堪えて、孫の、小さい子供の前ですよ。と、屋内は何だかバタバタと騒々しくなった。庭にいた子の父である彼も、その家内の騒動の様子に内心穏やかでは無かった。彼の親に、否、目の前の自分の子供の手前だろう、かもしれないが、彼は一旦虚勢を張ってみた物の、その実この横柄な言葉を口にした瞬間か...うの華445

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