うの華3 164
呆れたね。こんな大事な話を、あれが嫁であるお前さんに何も話してないとは。「あれがそんな手抜かりをする者だったとはなぁ。」舅はいかにも呆れ果てたと言う様子で、息子の嫁の目の前で嘆息してみせた。嫁はそんな大仰な舅に常とは違う気配を感じた。胸騒ぎを感じて、彼女は改めて舅の顔を見詰め直した。すると彼の目が笑っている。ドキン!とした彼女は、その彼の笑いの理由は何だろうか怪しく思った。そこで今迄の、舅が往来の方の入り口から入って来てから今迄の、彼の言動を思い出してみた。当然、この店の店主の言った言葉も脳裏には浮かんで来る。まさか…。と、彼女は思った。『否、そんな筈は…無いだろう。』彼女は自分の胸に湧いた黒い不安を打ち消した。結婚してからこの十何年か、彼女は舅一家の惣領息子の嫁として落ち度なく勤め上げて来た筈だ。そうだと内心...うの華3164
2021/05/31 09:41