飯田木工所の赤木さん--7
暢気な顔をして帰ってきた兄はしばらくは呆然としていたものの直ぐに連絡がつかなかった言い訳を始めた。どうせ嘘に決まっているが今はそれを言っていてもしょうがない。しかし兄には昔から不思議にこの性格があり、幸平がまだ幼い時分から一家の大事ともいう時に、何故かふっと居なくなる。これを単純に星と片付けて良いのか、自分の兄とはいえその気味の悪さを思うしかなかった。 今の一家の状態では葬儀らしい葬儀などできるはずもなく、三人で質素に葬ることになった。斎場で待つ間も、兄はもう何事もないかのように周辺をブラブラと歩いていた。母はすっかり萎れていて、そんな母の横に居て心配をするのは常に幸平だった。兄はやや年が離れ…
2024/07/18 09:23