冨太の行方 その時はその時、と開き直って、まずはとにかくコンタクトをとってみようということになり、それに先立って、霊界について一通りモスの説明をうけることになった。 電話をかけるのは死者
死んだらどうなる いよいよ霊界通信の始まりである。 交信する相手がたとえ冨太であっても、死んだ人間と話ができるなんてワクワクしないでいられようか。 「すごいね、
コンタクト そして土曜日。 午前十時、場所は居間。 タケルとマキ、そしてルネがいて、ルネの正面にモスがいる。ルネが庭の植木に水やリをしているスキに、マキがモスを居間まで連れてきたのだ。
ルネの思い出 確かにルネは、やるべきことはきちんとこなす。でも、想定外のことに対しては、まるで石のように表情を固くすることがあった。例えばこんなことがあった。 タケルがまだ小
遠い絆 昼食は、冷やしうどんと天ぷらだった。つゆはルネお手製である。味は一流で、その辺のうどん屋には負けていない。天ぷらの具はエビと椎茸、カボチャに舞茸。 キノコ類がいっさい苦手なタケルは、ルネの目
霊界通信機 昼少し前になって、ルネが買い物に出かけてしばらくすると、モスがやってきた。相変わらずの不審者ルックである。「ルネ様がお出かけになられたようなので」 とにこにこ顔だ。「もしかしてずっと見張
最近、水耕栽培というものを始めたのですが、べんり奈とかふだん草とか、知らなかったものがいろいろあるんですね。 どうやって食べるのかわからないけど、とりあえず美味しそうなので、育ててみることに(^O^)成長が楽しみです!
ルネの異変 「ちょっとさ、気の毒だったよね」 夜になってからマキが言った。 ルネは、食事をして一通りの家事を終えるといつもより早く寝床に入った。マキとタケルも早々に二階へあが
黒服の誤算 「あ、あの……」「うるせー!来るな!」 タケルは下駄箱の戸を開けて、手に触れた靴やサンダルを手当たり次第にモスに向かって投げつけた。 その様子を見て、モスが急に笑い
謎の伝言 「天使?あなたが?」「はい」「つまり神さまの使いでここに来た、と」「はい」 マキは腕組みをして考えこんでいた。 タケルはすでに、眼差しの優しさに油断してこの男を中へ入れてしまったことを後悔していた
訪問者 十五歳の男子といえば、絶好調に育ち盛りの時期である。当然、これだけの食事で足りるはずもなく、タケルは何か買ってくると言って台所を離れた。 振り返るとマキは、残ったカップラーメンの汁を飲んでいた。&nb
もう一人の母 いつの間にか、タケルは眠っていた。 目覚めたときはもう二時近くになっていて、ほどなくマキが帰って来た。コンビニ袋を下げている。 「お昼いっしょに食べようよ」 とアメリカンドッグとから揚げ
孤独の中で そんな幸せを、再び思い出させてくれたのは、祖父の冨太だった。 たった一度だけ、忘れられない冨太との思い出があった。まだ小学校へあがったばかりのころ、珍しく素面だった冨太が、タケルを映画に連れ
かすかな思い出 ルネとマキが仕事に出かけ、タケルも部屋へあがった。 借りていたDVDでも見ようかと思ったけれど、集中して見られるような気分でもないので、ただベッ
静かな朝 眠れたのか眠れなかったのかよくわからないまま夜があけ、ふらつく頭で一階へ降りると、ルネは旅館の朝食のような食事をとっていて、その横でマキがコーヒーを飲んでいた。 和食が嫌いなマキは
冬の寒い日、百均のスヌードと腹巻きをくっつけたら簡単お出かけ着(のつもり)ができました^_^; でももう春なので、しばらく出番はなさそうですが(^-^; 応援し
危機迫る タバコに火をつける気配にタケルが思わず顔をあげ、この部屋で吸うな、と文句を言おうとしたとき、また独り言のように言う。 「まだいる、あいつ」 その言葉と、マキのただならぬ表情を見て、タケルは今日自分が体験
不良主婦、マキ登場 いったい何だったんだ、あれは。 家に帰っても、タケルは、あの男のことが頭から離れなかった。確かにあいつは自分を追ってきていた。それは間違いない。なのに、いったいどこで消えたのか。 タ
消えた黒服 走りながら、タケルはふと気づいた。このまま逃げ帰っては危険だ。家を知られるのはまずい。自分だけならまだしも、家に爆弾でも投げこまれたらルネやマキにまで危害が及ぶ。どうあって
第五話 謎の黒服 そんなことを考えながらしばらく歩き、ふとタケルは、妙な気配に気が付いた。タケルの歩調に合わせるように、つかず離れず、一定の間をおいてついてくる足音がある。 タケルが足を止めると、その足音も止
第四話 憂鬱な夏休み 目が覚めたときはもう昼をまわっていた。 隣の部屋から騒がしい音楽が聞こえてくる。マキがCDをかけっぱなしで寝たらしい。 一階へ降りるとルネはとうに出勤していて、しんと静まり返って
第三話 ぬけ出せない闇 一人で部屋にこもったからといって気分が晴れるわけでもなく、ただ悶々と時間を過ごした。 今朝学校で担任から言われた言葉が、何度もくりかえし頭をよぎる。 夏休み前夜といえば、ついこの間までは
第二話 タケルの苦悩 冨太が眠る墓は、タケルの家からバス停で二つ分の場所にあり、タケルはよくこんな風に学校帰りに立ち寄った。その度に思うのは、あの冨太が、こんな場所で大人しく眠ってるなんて信じられない、ということ
第1話 富太、逝く 祖父、富太とみたが死んだ場所にタケルは立っていた。 半年前のあの日は、富太が死ぬ数時間前から雪が静かに降りはじめていた。 倒れた雪だるまかと思った、と、発見したすぐそばのマンションの住民が言っていた
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