両親のこと
母は体を動かすのが大好きだった。 社交ダンスは30年くらい習っていたし、 3年前に倒れたときは、水泳教室の会場だった。 いつぞやの法事の際、読経が終わり立ち上がった私に、隣に座っていた夫が言った。 「お母さん、一度も背中をつけなかったぞ」 そう、母はそういう人。 読経の間ずっと、背筋を立て、少しうつむいた首筋を見せて、椅子に浅く座っていた。 そんな母が、今は寝がえりも打てない。 時々、マッサージの真似事をする。 足から始めて、上半身、肩を抑えて腕。 肩から首筋、頭を指圧して、最後に横向きになってもらって、あたたかくてすべすべの背中を、直にさする。 気持ちよさげに口を少し開けて、目を閉じている母…
2021/01/20 22:21