エッセイ・『明星』
その日はひどく疲れていて、かなり早く床に着いたのを覚えている。 ところが、なかなか寝付けない。家族の生活音を遠く聞きながら、何度目かの寝返りを打った時、こんな会話が始まった。 「大変ご迷惑をお掛けいたしました」 「いえ…早くご対応いただいてありがとうございます」 業者の謝罪に私は応えた。 一人暮らし先に業者を呼んで壊れたドアストッパーの、修理を依頼したのだ。そして作業はどうやら完了し、これから業者は帰ってゆくらしい。代金は補償があるためかからない、とのことだった。 帰ってゆく姿を見届けようとした矢先、業者の男性はこう告げた。 「お客さま、当方の従業員より少々お話がございますがよろしいでしょうか…
2022/06/19 14:58