東北の宵は軍歌とともに更けていった
乳白色の湯けむりに覆われてしまった共同浴室から上がり、自分の宿泊していた部屋に戻った。部屋のドアをゆっくりと閉めたとほぼ同時に、控えめなノックの音がかろうじて聞こえて来た。 時刻は二十時をまわっていたため、清掃時間にしては遅く感じられた。 私が「誰呀(誰ですか)?」と尋ねると、落ち着いた若い声の日本語が聞こえて来た。 「朝、食堂でお会いした河村です。もし良ければ少し一緒に話をしませんか?」 河村さん、その朝、宿泊所の朝食レストランにて初めてお会いした若い男性であった。父親と一緒のテーブルに座って居た。東京大学にて法律を履修されていらっしゃるということであったので
2022/01/29 06:44