「わたしを束ねないで」
※今朝の空。数秒前は美しい富士山でしたが‥。 「わたしを束ねないで」 新川 和江 わたしを束ねないで あらせいとうの花のように 白い葱(ねぎ)のように 束ねないでください わたしは稲穂 秋 大地が胸を焦がす 見渡すかぎりの金色の稲穂 わたしを止めないで 標本箱の昆虫のように 高原からきた絵葉書のように 止めないでください わたしは羽撃き(はばた・き) こやみなく空のひろさをかいさぐっている 目には見えないつばさの音 わたしを注(つ)がないで 日常性に薄められた牛乳のように ぬるい酒のように 注がないでください わたしは海 夜 とほうもなく満ちてくる 苦い潮(うしお) ふちのない水 わたしを名付…
2024/08/24 18:13