ヘルペス!(2)
診察を終え、タクシー乗り場を探していると、検温をしている看護師が「タクシー会社に電話をしてあげますね」と言ってくれた。「少し時間がかかるそうです、そこのベンチで待って下さいね」人の情けが身に沁みる。「病院の人はみんな優しいなあ」本当に病院に来てよかった。三連休に入っていたら大変だった。ヘルペスのウイルスは子どもの頃に発症する水ぼうそうだと言う。六十五年ぐらい一緒に暮らしてきたのだ。一日に何度も何度も手を見る。大きな水疱は波打っているみたいだ。神経に沿ってるらしいから、ここに神経があるのだ。血管もある。こんなに手を眺めたことはなかった。手は在って当然だった。水疱は左の手と腕に限局している。じっと見ていると水疱は動いている。奴も生きているのだ。当然僕も生きている。「生きている」と言うことはなんと不思議なことなんだろ...ヘルペス!(2)
2020/08/29 16:13