百物語 八十回目「絡新婦」
誰にでも、もて期というものがあるという。どうも、おれにもそんな時期があったようだ。といっても、ほとんど自覚はなかったのだが。会社勤めをはじめて間もないころ、どうも客先でもてていたらしい。 「こないだの合コンどうたっだんですか」「ああ、あそこはだめだよ」「へぇ、何でですか?」「何でって。おまえの人気が高すぎるんだ」「冗談でしょう」「いやいや、おまえの物まねとかして盛り上がったりするんだよ」 おれのいないところで、色々あったらしい。おれ自身に対するアプローチは、ほとんどなかったけれど。客先で作業していたときに一度話しかけられたことはある。それくらいで。そもそもおれは、情けない話ではあるが、おんなの…
2019/09/30 23:28