「普通の人々が、どのように戦争に引き込まれていったのか。そのリアルさに震える」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(10)一九一四年夏Ⅲ』

「普通の人々が、どのように戦争に引き込まれていったのか。そのリアルさに震える」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(10)一九一四年夏Ⅲ』

ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(10)一九一四年夏Ⅲ』(山内義雄訳) フランス国民の大多数は戦争反対だった。誰しも戦場で殺し合いなんてしたくなかった。ところがいつの間にかずるずると戦争に引き込まれ、「領土保全のためなら仕方ない」または「正当防衛のためなら仕方がない」と考えるようになる。最後の砦だったインターナショナルの闘士たちも次々と寝返っていく。 普通の人々はこのように戦争に巻き込まれていくのかと、読者自らが追体験できる。正直言って怖い。 10. 一九一四年夏Ⅲ『チボー家の人々』第10巻のあらすじを紹介する。 ジャックはメネストレルの指令でベルリンに向かっていた。オーストリ…