「寒いな…早く見つけないと……」 まだ午前中で陽はあるものの、大陸の中でも北のほうに位置する水の国は春先や秋口でも冷える。 高熱ではなくなったものの微熱もある少年の体調が悪化しないよう、早急に保護しなければならない。
ノマカプのオリジナルとAPH(ヘタリア)のギルアサ、アンアサの二次創作BL小説のサイトです。
5年間ほどPixivで書き続けていた小説を移行しつつ、毎日1P分くらいの更新を続けています。 ゆえに…記事の数だけは多いです(*゜―゜)b 今現在1000記事以上っ!
「でもよ、どうせなら一点だけ聞きてえ。 どうせ遠ざけるつもりなら、なんで口止めしたんだよ。 あの時、暴露してりゃあもっとさっさといなくなっただろ?」 そう尋ねたことに対する錆兎の答えは驚くべきものだった。
それから錆兎が話したことは、横領した同僚の逮捕の裏にそんなことがあったのかという多少の驚きがあったものの、おおかたは予想していた範囲のことだった。
──話があると言うのは不死川の事だろう? と始める錆兎。
──お前さ、この店のチョイスなに? 宇髄的には非常に沈んだ気分だったので店のチョイスは錆兎に任せたのだが、連れて行かれたのはどう見ても大の男二人で入るには少々不似合いな、可愛らしい雰囲気のレストランだった。
社員旅行から3か月が経ち、厳しかった残暑がようやくなくなったかと思えば、一気に冬の寒さが襲ってきた11月のとある日のことである。
「とりあえずそういうことで、先に受け入れやすい形で説明をして脳内に残したところで、いったん全てを終わらせて、義勇と宇髄はここで無関係な善意の第三者の立場にしておく。 加害者の排除のために感情的になって、被害者の保護を怠るのは下策中の下策だ。 加害者の排除は必要だが、それよりも優先...
──人と言うのは恐怖より不安の方に耐えられないらしいぞ。 今日の相方は上機嫌だ。 いや今日は…というより、今語っていることが彼にとって楽しい事なのだろう。
──あの時の君の対応は甘いと思っていたのだが、今の状況を見ると正しかったんだな… あの社員旅行から数か月後、高校の同窓会の帰りに錆兎と杏寿郎、村田は少し飲み直している。
「イジメとかってさ…恨みの地雷を埋めまくってるようなものなんだよね…。 踏まない可能性もあるけどさ…いつどこで爆発するかわからない…。 普通に一歩踏み出しただけのつもりが大爆発で大怪我したり…最悪命を落としたりね…。 そう…その危険は自分が死ぬまで…どころか、下手をすると死んでも...
──不死川、お疲れさん。隣いい? ずっと抱えて来たものがすっかりなくなって、半ば脱力して新宿行きの列車の座席に座っていた不死川は、聞き覚えのある声に顔をあげた。 その目の前にはさらさらの髪以外は何も特徴と言える特徴のない、しかし人の好さそうな男。 「あ~、村田かぁ。お前、鱗滝や煉...
「とりあえず…あの時とは状況が違うし、俺達がまず優先すべきは義勇の平穏な日常だ。 俺は付き合うと決めたからには何を置いても義勇を優先して守るし、必要なら ”非常識な力” を使うことも厭わないが、今はその時ではない。 むしろそんなものを振りかざせる人間がバックについていると広まった...
「おかえり!錆兎っ!」 と、3人それぞれが戻ってきた錆兎を迎える。 義勇は嬉しそうに…杏寿郎はどこか難しい顔で…そして村田は心底ほっとした表情で。 「ただいま、義勇。 不安になるような事をさせて申し訳なかったな。 だがもう大丈夫だ。 不死川もきっちり色々理解して反省して、今後迷惑...
そこからは二人して幼少期から学生、そして社会人になってからの錆兎の話を聞かせてくれる。 初恋泥棒と言われた幼少期。
そんな話をしていると、意外に早く村田がやってきた。 そして部屋へ入るなり苦笑。
「君は暴力を振るってきた相手が何事もなかったように処罰もされなくても気にならないのか?」
──うるさく暴れるようなら村田を呼んでくれ …と言うのは、社交辞令でも何かの比喩でもなかったようだ。 廊下に出るなり杏寿郎はドデカイ声で ──皆、加害者に甘すぎるっ!! と叫ぶ。
「まあ落ち着いて話をしよう。 というわけで…良い茶菓子を持ってきた」 と、勝手にお茶を煎れながら錆兎は懐紙の上にコロコロと丸いキャンディのような包みを転がして、
いきなり飛んでくる拳。 準備もなく避ける余裕もない。
冷静に冷静に…そう頭の中でお題目のように唱えながら、実弥は深呼吸を繰り返す。 しかしながら、それは義勇の目には奇異に映ったようで、余計に警戒の色が強くなった。 「別に殴らねえから、そんなに警戒すんな。 今回は…ちっと伝えたかっただけだァ」
そうして待つ事十数分。 長いようでもあり短いようでもあるその時間を部屋で過ごして、実弥は部屋を出て再度宴会場の外まで足を運んだ。
今日、絶対に決めるっ!! 実弥はそう決意して、夕食を摂る宴会場へと足を踏み入れた。
──宇髄…頼みがある。一生の頼みだっ! 錆兎達の部屋を出て宇髄が不死川達の部屋まで不死川を迎えに行くと、思いつめた顔で出て来た不死川はいきなりその場で土下座してきた。
一人きりになった旅館の部屋で、実弥はグルグルとまとまらない思考に没頭している。 ほんの半日くらいまではこんなことになるとは思ってはいなかった。 義勇に避けられている自覚はあったものの、二人きりになって自分に悪意はなく、義勇の事が好きで今後殴らないと言えば、普通に付き合えるのだと疑...
とりあえず義勇にどう話すかは一度考えてみると言う不死川を部屋に残して、宇髄は錆兎と共に不死川の部屋を出た。
もう何がなんだか宇髄にもわからない。 義勇と恋人同士になったはずの錆兎が、不死川が義勇とつきあえるわずかな可能性というやつを教えてやると相変わらず淡々とした口調で言うのである。
──…ふっ…ふざんけんなァ!!何横からかっさらってんだよっ!卑怯もんがァ!!
「義勇と実際にやりとりをする前にいくつか確認事項がある。 何度も悪いな」 と、部屋に入るなり錆兎が言う。
錆兎が居れば不死川が居ても許容できる… 義勇の答えは簡単に言えばそういうことだ。 それは錆兎にしてみたら悪い答えではないはずなのだが、錆兎は困った顔を宇髄に向けた。
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「寒いな…早く見つけないと……」 まだ午前中で陽はあるものの、大陸の中でも北のほうに位置する水の国は春先や秋口でも冷える。 高熱ではなくなったものの微熱もある少年の体調が悪化しないよう、早急に保護しなければならない。
「錆兎っ!!逃げたっ!!逃げちゃったのっ!!捕まえてっ!!!」 いきなり部屋のドアが開いて焦った顔の真菰が飛び込んできた。 「「逃げたって、何がっ?!!」」 と、驚いた錆兎と炭治郎の声がはもる。
熱がなかなか引かず、早1週間。 体調が回復するまではなるべく側についているつもりだったのだが、錆兎も一国の王なので、さすがにそれにも限界が来る。 朝食を一緒に取って薬を飲ませてウトウトと眠ったところでソッとその側を離れて執務室へと急いだ。
錆兎の大切な被保護者が目を覚ましたのは、翌日の明け方だった。 発見したのが前日の午後で錆兎はそれから傍らに付き添って、日が落ちてまた登るのを横目に濡れタオルをかえてやりながら、汗を拭いてやっている。 王と言っても割合と自分で動きたい性質の錆兎だが、あいにくというか幸いと言うか、周...
冷え切った体…青い顔…… ベッドに寝かせてやった方が体勢的には楽なのかもしれないが、冷え切っているので体温を少しでも分け与えてやりたい。 結果、ベッドで半身起こす形で抱きしめる。
幻の国に使いを送ったところで、もう打てる手は打ったことになる。 今までの経験上、返答が来るまで1週間から10日ほど。 協力を依頼したからには、それまでは動くわけにはいかない。
元々嵐の国がかなり攻撃的な国であること、使者の件、炭治郎の件で杏寿郎はかなり戦う方に傾いてきている。
「おかえり! 余裕で間に合ったようだな。 まあ君のことだから心配はしていなかったが…」
やがてドアがノックされ、どうやらリビングの方からメイドらしき声に昼食の用意が出来た事を告げられるが、とてもではないが寒くてベッドから出る事が出来ない。 なのであとで食べるので置いておいて欲しいとベッドの中から告げると、あとで食器を取りにくる旨を告げて下がって行く。 その気配を感じ...
真菰さんに言わせると、錆兎さんは【昭和の親父】みたいなところのある人なのだという。 真菰さんと共に大叔父さんに引き取られて現代っ子も少なくはないお弟子さん達と接するうちにアップグレードされて今では表にだすことはないらしいが、幼い頃はよく『男なら、』とか『男として生まれたなら、』み...
もしかして義勇には好きな奴が出来たのかもしれない。 俺がそう気づいたのは、例のキス事件の少しあとだった。
──えっ?!!バレてたっ?!!! 俺が錆兎さんにキスをしたのが錆兎さんにバレてしまっていた。 それを真菰さんから聞いた時、俺は人生が終わったかと思うくらい衝撃を受けた。
午前中は特に重要な案件もないので、一応村田に隣の自宅に居ることを伝えた上で、リビングで真菰に話を聞いてもらった。
思春期になって距離が出来てしまったように思っていた息子との距離がまた近くなってきた。 義勇が俺の部屋を訪ねて来た時、そう喜んでいた俺は翌朝、何もなかったように義勇を中学に送り出すと、深い悩みを抱えつつ不本意ながら真菰を呼ぶことにした。
──錆兎さん、今日一緒に寝ていい? とある夜のことである。
それを実行するかどうか、俺はぎりぎりまで迷っていた。 いけないことだって自覚はすごくある。
その話をしたのはいつだったのかな…。 1月2日だったのは確かだった。
錆兎さんの事で本人に言えない事は真菰さんへ…そういう認識だったからついつい真菰さんがいいって言っちゃったけど、落ち着いて考えてみたら異性の真菰さんに話すことじゃないのかもしれない…
中学1年生くらいでああいう漫画とかを見たら、女の人の裸とかで頭がいっぱいになるものなんだろうけど、その日に俺の頭をいっぱいに占めていたのは、登場人物の身体じゃなくて、表情だった。
小学生時代…学校側とも町会とも仲良しだった錆兎さんの数々の個性的な提案で、俺達の小学校は随分と変わったらしい。
「ほら、飲めよ。」 コトリと目の前に置かれるマグ。 鼻の頭と目を真っ赤にしながら、義勇はそれを手に取った。
「あ、ぎゆ…」 昼休みがそろそろ終わるので教室に戻ると、ちょうど義勇も戻るところだったらしい。 声をかけて駆け寄ろうとした錆兎はピタリと足を止めた。
事件の当日は学年ごとに固まって、食堂で打ち上げをする予定だった。 1年は2クラスだが、A組もB組も入り混じっての打ち上げだ。
村田は錆兎が思ったよりも空気を大切にする人間だったようだ。 食堂の片隅の席ならいいかと思っていた錆兎だったが、思い切り込み入った話をすることになるので村田は食堂でテイクアウトのおにぎりを買って、錆兎にも同様にするよう指示したうえで空き教室に連れて行く。
そうして解いているうちにいつのまにか昼休みに。 「お前さ…一体何解いてるの? これ何?俺ちんぷんかんぷんなんだけど…」 頭上から村田の呆れた声が降ってくる。
「この問題は…、冨岡、解いてみろ」 科学の時間、教師に言われて立ち上がった義勇は白墨を手に硬直する。 さすが進学校。 問題が難しすぎて全くわからない。
――毒物が混入されていたのは、被害者の紙コップ…物理的に毒が混入できた可能性があるのは、ジュースと氷と紙コップか…。 緑茶のマグを片手に分厚い資料に目を通しつつ、そうつぶやく錆兎とそれに見惚れる義勇。 ああ、カッコいいな。 まるでドラマに出てくるイケメン刑事みたいだ…などと思いな...
──お前は脳内変換が激しすぎだ… なんだか止まらなくなって泣いて泣いて泣いて…泣き疲れるまでずっと胸を貸してくれて、あまつさえなだめるように背をさすっていてくれた錆兎に泣いていた理由を聞かれて正直に答えると、再度のため息と共に降ってきたのはそんな言葉だった。
「…あ……さびと…なんで……」 結局納得しようとしまいとさして役にたちそうな能力などないので拒否権などあるはずもなく、指令の通りに私立月陽学園に転入した義勇。
「やっと学校に慣れたところなんだ…転校は…勘弁してもらえないだろうか…」 立派な執務室に呼び出されて、思い切り困ったような…悲しそうな…そんな顔をする男子高校生……。
第1章_プロローグ
そうして駆け付けてみれば失血死しかけている天元と号泣している善逸。
そんなある意味少し不穏で和やかな日常は本当に絶妙なバランスで成り立っている。 それはある日のことだった。 当たり前に出動を命じられて、錆兎がいつものように車の助手席のドアを開けて義勇を乗せた後、自分が運転席に座る。
今日も元気に任務待ちである。 ただしいつもと違うのは義勇の服。
──君が噂の義勇ちゃんね。俺は村田。医療本部長なんだ。よろしくね。 実ににこやかで友好的。 そして警戒心を起こさせない彼は威厳が足りないと言われ続けているのだが医療部としては最適なんじゃないだろうか…と錆兎は思う。
「疲れたな…」 錆兎は部屋へ戻ろうとしたが、あまりの眠気に誘われる様に人気のない談話室に吸い込まれる様に入ると、そのまま窓際の椅子に腰をかけた。
──…宇随さん…もう痛くない? 夜…任務の帰りに泣き寝入った善逸が起きて来ての第一声がそれだ。 臆病でヘタレなくせに、自分より遥かに色々強い宇髄のことを気にかけるとか、馬鹿か?こいつは…と思いながらも、それがなんだか心地いい。
ああ、良い人生だった…と清々しく閉じるはずだった宇髄の人生の幕は、強引に開けられるどころか引きちぎられたらしい。
いいもん…というのは本当だと宇髄は思っている。 普通は滅多にみられないジャスティスの第三段階。 宇髄のそれはしかし、今まで何度か問題なく使っていた。
3つ目のイレギュラーで死を覚悟しつつ色々と最期の計画を建て始めた宇髄。 とりあえずしのぶに指示したほうのイヴィルは弱い方の個体だったので偶然ではあるが我ながらいい判断だったと安堵した。