詩「アポロンの眼」

詩「アポロンの眼」

ディオニソスに魅入られ 葡萄の蔓の絡まる酒杯を享(う)けた 昏い眼光を滾(たぎ)らせ 無形の岩漿*を地に撒いた ピンセットで標本台に載せる 一分の狂いなき手つきでつがえた アポロンの銀の矢が 杯を貫き 絶対零度の衝撃が またたく間に岩漿をかためた 射手を仰ぎみれば その瞳は日輪のようにまばゆく 世界を統べている 畏れおののいて わたしはひれ伏した…… 一切を留める 精緻な指捌きに口づけて 授かった天秤を掲げると 岩漿に言葉があてがわれる代わりに 凍りついた かれの輝く瞳が わたしを射! その片割れはわたしに嵌め込まれた ――音は鎮まった ――音は斃(たお)れた 砕かれた空の杯を拾い集めたが 鳴…