第12回 はじまりの風景
本屋で立ち読みをして時間を潰し、夜の七時過ぎにマンションにたどり着いた。 キッチンで真理子が料理をしていた。 洋介は部屋着に着替えてリビングで相対性理論の続きを読んだ。 手から本が滑り落ちる感覚で目が覚めた。いつの間にか眠っていた。本を拾い上げて、照れ隠しのだらしない笑みを真理子に向けた。真理子はダイニングテーブルに料理を並べるのに集中していて、洋介のほうを見ていなかった。 ダイニングにいった。食卓には、サラダと刺身、味噌汁と冷凍食品のチャーハンが並んでいた。 洋介はきょとんとしてしまった。 そう。食事はひとり分しか用意していなかった。 真理子はひとりで食べはじめた
2024/07/28 08:18