銀河太平記・265『鈴麗』鈴麗満洲というのは辛い土地。村の年よりたちは『辛い大地』という。『土地』と『大地』は一字違いだけど、意味は大きい。子どもは、自分の村と周辺しか知らないから、単に土地。大人たちは、作物を売りに行ったり出稼ぎに行ったりで地平線の向こうまで知っているんで『大地』っていう。中には火星のマス漢まで稼ぎに行ったり移住したりした人も居て、そういう人が都会や火星の匂いをさせて帰ってくると別の意味で土地って呼ぶ。「銀河宇宙の規模で言えば満洲の土地なんて、目の前にホワホワ浮いてる小麦のカスみたいなもんさ」三年前までニキビ面で麦踏みしてた関石が得意そうに言ったときは、こいつは関石の皮を被った宇宙人かと思った。村の大人たちもたいていは――関石は火星に行って田舎者になった――と言っていた。辛い土地なのは主...銀河太平記・265『鈴麗』