小説 死神 第二十章 海神様
第二十章海神様ヨーコさんの運転するクルマの中にいた。それもレトロなフォルクスワーゲン・ビートル。六十年くらい昔のものではなかろうか?カーステレオらしきものは見当たらないけれど、車内にはジョン・レノンのイマジンが鳴り響いていた。クルマは外に明かりも見えない闇の中を走り続けているので、どこを走っているのかさっぱりわからない。東北震災直後の道路や町中を思い出した。電力不足が懸念されたために街灯が消され、都心でも夜の街中は不気味なほど暗かった。震災二日後に、支援物資を持っていく銀行の一員に加わって夜半から明け方にかけて東北自動車道を走ったが、道路の街灯が消されており、ひたすら闇の中を走っていたような感覚だった。ここはどのあたりだろう?恐ろしいほど何もない。「佐渡島の北西百キロくらいですね。」え?今なんと?佐渡島の北西っ...小説死神第二十章海神様
2020/12/30 00:00